「ホーウィン×二宮五郎商店」の総革財布

東京・向島で、60年以上も革製品を作り続けてきた「二宮五郎商店」。この老舗が"革のダイヤモンド"とも称される〈シェルコードヴァン〉を始めとした米国ホーウィン社製の革を使ってを生み出す革小物たち。「藤巻百貨店」でのみ味わえる、革とともに人生を歩んでいく愉悦をぜひ味わってほしい。

「幻の革」を生み出すホーウィン社

100年以上に渡り
「幻の革」を生み出すホーウィン社

強靭にしてしなやか。そして美目麗しい。馬の臀部の皮から作られるコードヴァンは、そんな理由から"革のダイヤモンド"とも称される。なかでも米国シカゴで創業以来107年もの間コードヴァンを作り続けてきたホーウィン社のそれは、特に〈シェルコードヴァン〉と呼ばれ、その品質の高さゆえに世界的に知られる"幻の革"だ。「シェル」とはつまり「貝」のこと。貝のように硬くそして美しいということで、著名なシューズブランドのアッパー(甲の部分)にも使われていることでも有名だ。
〈シェルコードヴァン〉は、ホーウィン社によって商標登録されている。つまりホーウィン社にしか作ることができないため希少価値も高く、その価格は他のコードヴァンの3倍は下らないそうだ。

二宮五郎商店代表の二宮眞一氏

二宮五郎商店が、「幻の革」の
魅力を最大限に引き出す

藤巻百貨店でもおなじみの「二宮五郎商店」は、ホーウィン社の〈シェルコードヴァン〉を扱える世界でも数少ないブランドのひとつ。工房へ届いたばかりのその革を、代表の二宮眞一氏に見せてもらった。
「革の触感を活かすため、オイルと染料以外は使わずに仕上げているんです。他のコードヴァンは仕上げにコーティング剤を使って革を一定の見栄えに整えるケースも少なくないのですが、個体ごとにそれぞれ異なる色と質感を活かす。これがホーウィン社の仕事です」と二宮氏。時折、表面に白いワックスが浮いている革もある。「ブルーム」と呼ぶのだが、これがその証だ。「革を保護するために浸透させたワックス(脂)は、動物性。気温が高くなれば消えますが、気温が下がると白く浮き出ることがあるんです」。

総革だからこそ味わえる革の「密度」と「高い質感」

総革だからこそ味わえる
革の「密度」と「高い質感」

今回ご紹介するアイテムは、裏張りはもちろん、カードのコンパートメントの裏側に至るまで、すべてホーウィン社がなめしたレザーのみで作られた"総革"製。なかでも〈シェルコードヴァン〉のウォレットは、ひとつを作るために馬1頭分の革が必要だという。それゆえ、ひとたび手にすれば、誰もがその密度の高さを感じる。たとえるなら「合板」と「無垢材」の違いに近いかもしれない。想像以上の密度感に虚を突かれ、美しいハリとツヤに魅了される。そして、意外なほどの柔らかさとしなやかさに驚くだろう。
"総革"製にこだわる理由を聞くと、「他のレザーや布などを使うと、別素材の特性が混じるため、〈シェルコードヴァン〉の特性や持ち味が削がれてしまう。商人の立場からすれば、表側だけに使って原価を下げたい気持ちはありますが、この革の魅力を味わって頂くためには、単一素材で組み立てるしかないのです」という。このこだわりこそが二宮五郎商店の真髄だ。

”使用感”をも計算に入れた感覚的な職人技

"使用感"をも計算に入れた
感覚的な職人技

二宮五郎商店のモノづくりは「実際に使用する際にツールとしての本質を失わないか」を常に自問しながら繰り返されるという。つまり、お札やコインなどの中身を入れて使い始めて、初めて製品として成立するのだ。"使用後"を見越して設計するという感覚的な職人技が、使うごとに常に完成し続けるアイテムを生み出している。二宮氏が約1年使っている鈍く黒光りしたウォレットを持たせてもらうと、心地よい重量感とともに、手の平に吸い付くような"もっちり"とした手触り。まるでまだこの革が生きているかのような錯覚すら覚える。「このもっちり感は、〈シェルコードヴァン〉ならでは。質感や重み、指先に伝わる滑らかさなど五感に訴えるものが格別に違います」。
使い方次第でカスタマイズされていく様はエイジングというひと言で片付けるのはもったいないほど。男ならいつかは持ちたい本物の逸品。革を育てるのではなく「共に育つ」愉悦をぜひ味わってほしい。

【こだわりのモノづくりの全貌をCHECK!】

工房に在籍する職人の数は、現在11名。20代の若手から最高齢は70代以上と年齢層も幅広いが、裁断から縫製、コバと呼ばれる裁断面を磨く「コバ漉き」などの仕上げに至るまでの全工程を、1人の職人が行なう「他技能職人制度」を導入し、素材となる革の持ち味をできるだけ活かせる体制を整えている。

  • 1.世界中から届く多彩な革

    「二宮五郎商店」で使用する革は、ほとんどが輸入品。主な産地は、北米とイタリアを始めとしたヨーロッパ。北米からは主にクロムなめしで仕上げた牛革が、ヨーロッパからは植物タンニンでなめされたナチュラルレザーがそれぞれ入荷する。
  • 2.使用部分を確保する"型入れ"

    使用部分を確保する型入れ

    入荷した革は、広げると動物のかたち。革の繊維密度の詰まった部分のみ残すなど、使用できる部分を確保するのがこの工程。二宮さん曰く「腹に近い部位は伸びが生じるので使用しない」そうだ。
  • 3.パーツごとに革を"裁断"

    パーツごとに革を裁断

    型入れで綿密にチェックしたあとに、各パーツごとに裁断する。裁断機は油圧で落下版を押し下げ、プレスカットする方式。強さによって小物用と厚物用と能力別に分けている。
  • 4.縫製前のひと手間が違いを生む

    縫製前のひと手間が違いを生む

    裁断した革が厚過ぎる場合は革を薄く漉き、均一な厚みに整える「大漉き」を行う。一方で、各部品の縫合面などは2枚の革が重なるため、部品の縁の部分のみ漉き取る「コバ漉き」を行うなど縫製前の"下ごしらえ"は、逸品を生む肝となる作業だ。
  • 5.いよいよ"縫製"!

    いよいよ縫製

    各パーツは、一度糊付けした後にミシンで縫製する。部品の片面のみにしか糊を使わない業者も少なくないが「二宮五郎商店」では両面接着が基本。糊が十分に乾燥したら、用途に応じてミシンを使い分けて縫製する。
  • 6.最後の仕上げ"部品の取り付け"

    最後の仕上げ部品の取り付け

    ファスナーやスナップボタンなどを最終的に取り付けて完成。下ごしらえの過程で行うことも多いが、ブランド名の押印加工はこの段階で行うことも。シリアル番号を入れる製品は、縫製の終わった製品にしか押さないのが鉄則だそう。
お取扱いアイテム
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