特別鼎談 プレミアム純米大吟醸「彩 -Irodori-」を解き明かす 第1回(全4回) 「極上の香り」の秘密に迫る!

藤巻百貨店の日本酒第一号「彩-Irodori-」。3つの酵母を使った純米大吟醸をブレンドする・兵庫県加東市東条産特A地区の山田錦使用・25%精米・無酸素熟成・中取り・瓶燗……。酔鯨史上最もこだわり抜いた造りであるこの酒を解明するため、蔵元である酔鯨酒造の社長・大倉広邦氏と、ラベルを書いた前田鎌利氏にご登場いただいた。藤巻百貨店代表の中村亮を交え、4回に渡ってお送りする鼎談の第1回は「彩-Irodori-」独特の香りのお話。(※2017年時点の情報です)

  • 前田鎌利
    前田鎌利(まえだ・かまり)
    一般社団法人 継未-TUGUMI- 代表、書家。5歳より書を始める。東京学芸大学教育学部書道教員養成課程を卒業。2010年にソフトバンクアカデミアに第一期生として所属し、初年度首席の成績を修める。2014年に独立起業し書道塾 継未-TUGUMI-を設立、650名を超える生徒を指導、作品制作、個展を行う。ソフトバンクで孫正義氏から何度も「一発OK」を勝ち取ったノウハウを公開した著書『社内プレゼンの資料作成術』がベストセラーに。
    http://www.maeda-kamari.com/
  • 大倉広邦
    大倉広邦(おおくら・ひろくに)
    学生時代は地酒・ワイン専門店でアルバイト。2002年大手ビール会社に入社、11年間在籍し、東京と名古屋でチェーン店を中心に営業を担当する。2013年4月に退社し、同年5月に酔鯨酒造入社。2016年、酔鯨酒造の4代目代表取締役社長に就任。現在、全国に酔鯨ブランドを広めるべく活動中。
  • 中村亮
    中村亮(なかむら・あきら)
    2011年株式会社ザッパラス(東証1部)コマース事業担当取締役に就任、2012年5月日本の逸品のみを取り扱うこだわりのECサイト「藤巻百貨店」を故藤巻幸大氏と共に立上げる。2015年8月に藤巻百貨店事業を主力とした株式会社caramoを設立し独立、代表取締役社長に就任。
やりたいようにやってください。ただし、革新的な日本酒を

やりたいようにやってください!
ただし、革新的な日本酒を!!

中村 まずは「彩-Irodori-」で乾杯しましょうか。
一同 乾杯!
前田 うまい! 紹介していたとおり、香りのインパクトが凄いですね。
中村 そうなんですよ!
前田 そもそもどうしてこのお酒を造ることになったんですか?
中村 藤巻百貨店は日本をテーマにしたサービスなので、「日本酒」はいつかやってみたかったんです。ただ利き酒師や酒屋の方などの専門家たちヒアリングしつつも、僕ららしい日本酒の展開の仕方という答えが出せなかった。他の人とは違うもの、個性を発揮するものを提案するのが藤巻百貨店らしさなので、そういう日本酒ってなんだろうと。そうした中、高知へ行く機会があって大倉さんを紹介していただいたのが出会いのきっかけですよね。

大倉 お会いして、お話していく中で一緒に面白いことができるんじゃないかという気持ちになりました!新しいチャレンジをするのが僕は大好きなので!
中村 日本酒を扱うのならば、先ほどの藤巻百貨店らしさを強烈に感じるものから始めたいと思って、今までやりたくてもできなかった「酒がうまくなる方法」を盛り込んで欲しいとお願いしました。

コンセプトは「極上の香り」
3つの酵母で辿りついた答え

大倉 今回の「彩-Irodori-」は酔鯨史上最高のこだわりで作り上げた自信作です! ただ、全部で300本造ったんですけど正直この数が限界なんです。
前田 どうしてですか?
大倉 今回最も挑戦した部分に関わるんですが、純米大吟醸特有の華やかな香り、これはとてもいい香りである一方で、食事には合わないこともあるんです。土佐の酒は食事と楽しむ「食中酒」であるべきだと思っていますのでそれは良くない。

「香り」がコンセプトのお酒

大倉 では単にフルーティーな匂いではなく、もっと複雑な香りで、そこに酔鯨らしい「酸味」と「苦味」を残して造ればいいのではという考えに至りました。そのために、3つの酵母を使って「香り」にフォーカスした酒造りを行っています。
中村 「香り」がコンセプトのお酒ということですね。酵母の違いが香りの違いを生み出すわけだ!
大倉 はい。でも、酒造りは酵母の働きを管理してくのが大事なんですけど、複数の酵母を一緒に入れるとどれかが支配的になって狙っている香りを出せなかったりするんですね。なので3種類の酵母をそれぞれ使ったお酒を造って、それをブレンドすることにしました。
中村 日本酒でブレンドするって初めて知りました。
大倉 酒質を安定させるためにブレンドすることはありますが、香りのためにというのは多くないと思います。

純米大吟醸酒を3本同時に造るってありえない

大倉 ブレンドも初めてですが、実は純米大吟醸酒を3本同時に造るってちょっとありえない話なんです。1本だって大変なんですから。何より、3つのお酒を同時にいい状態にしなくてはならないことが難しい。酵母の働き方がそれぞれ違うので、そのピークを合わせるのが困難でした。本当に今回は挑戦だらけで……だから300本の量が限界だったんです。
中村前田 なるほどー!
中村 ところで3つの酵母とはどういったものなんですか?
大倉 酵母の一つ目は酔鯨が主に使う、バナナやメロンの香りのする酢酸イソアミルという成分を出す「熊本9号酵母」。次に「1801」という酵母。これはりんごや洋ナシのような香りのカプロン酸エチルという成分を出すのが得意です。そしてその両方を生産する「AC-95」。熊本酵母をベースに高知県が育種した酵母です。
前田 微生物は人間にはどうにもできない領域もあると思うので、3つ同時にゴールさせるのは至難の業ですね。

3つのお酒がそれぞれでおいしくても、ブレンドするとおいしくないというケースだってある

大倉 酵母の働きもそうですし、今回はブレンドもしているので、完成形をイメージするのが難しかった。3つのお酒がそれぞれでおいしくても、ブレンドするとおいしくないというケースだってあるわけですから。
前田 へえ! 確かに単純な足し算ではないはずですよね。
中村 ブレンドの比率って一緒ですか?
大倉 それは企業秘密です(笑)。杜氏もスタッフも何度も比率を変えて、試しては悩んでを繰り返していました。「これじゃない!」とか言いながら。
前田 答えがないのに答えを探すわけですからね。
中村 そうやって試行錯誤しながらこの「南国の果実」のような独特の香りに辿りついたのはすごいですよ!

>> 次回は素材の山田錦と、独特の熟成について。

南渋谷 なみの上
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※通常、酔鯨酒造の日本酒は取り扱っておりません。
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