【椎名切子（GLASS-LAB）】薔薇の大聖堂

■Web投票でワンツーフィニッシュ！いま話題の砂切子
これを一点一点“人の手”で作り上げているというのだから、驚くほかない。これまで多くの江戸切子を目利きしてきた藤巻百貨店が、その概念を根底から覆され、最も衝撃を受けたのが“魔法のグラス”の異名を持つ「平切子×サンドブラストによる砂切子」である。0.09ミリの線で構築される緻密な模様はもちろん、水を注ぐとさらに“変化”する唯一無二の意匠は、我々の度肝を抜いた。2020年に行われた江戸切子の祭典「江戸切子新作展」では、一般参加によるWeb投票で1位（太陽の花）、2位（赤薔薇の大聖堂）を独占。江戸切子の伝統技法である平切子にサンドブラストを掛け合わせて初めてできる独創的な世界観は、江戸切子マニアなら一度は手にしたい“夢の逸品”のひとつなのである。さて、「太陽の花」に続き、この作品の登場を待ち望んでいた方は多いはず。Web投票2位に輝いた「赤薔薇の大聖堂」がいよいよ降臨！ひとつ作り上げるのに膨大な時間と労力を要するという本作を特別にご用意いただいた。争奪戦は必至、無事手に入れた暁にはどうかこのグラスで祝杯を！

■快進撃を続ける、平切子×サンドブラスト＝砂切子の衝撃
隅田川の東、清澄白河の地で三代続く「椎名硝子」は、1950年に初代・椎名三男氏が創業した「椎名硝子加工所」を礎とし、脈々と受け継がれてきた下町の老舗だ。二代目の康夫氏は、現在10人ほどしかいない平切子の名手。平切子とは日本の伝統工芸に指定されるガラス加工技術で、文字通りガラスに平らな面をつくる技術のこと。工房では、今や貴重な存在となった旧式の研磨機が現役で稼働している。そして三代目の康之氏（写真左）が得意とするのは、細かな砂を吹き付けてガラスを削るサンドブラストという技術。平切子×サンドブラストという二つの技術を擁する工房は国内でも非常に珍しく、その両方をかけ合わせた彼らだけの表現を「砂切子」と呼ぶ。康之氏の兄である隆行氏（写真右下）が2014年に設立した「椎名切子（GLASS-LAB(株)）」では、その強みを生かしたものづくりを展開。あっと驚くような意匠と高い技術力はテレビをはじめとした各種メディアを賑わせ、気鋭の切子ブランドとして高い注目を集めている。

■0.09ミリの超絶技巧！和の伝統技術で蘇らせる西洋の大聖堂！
荘厳なゴシック建築を思わせるバラ窓や尖塔アーチのステンドグラス、薔薇の模様をあしらった大理石の床…。ヨーロッパの大聖堂をまるごと閉じ込めたかのような圧巻の景色は、サンドブラストで描かれたもの。精巧緻密な模様は、まさに人知を超えた美しさだ。最も細い線は0.09ミリで、その技術は“世界最高レベル”と称されるほど。リアルな描写に一役買っているのが平切子による“面”のカットだ。面が窓や壁の役割を果たすことで、大聖堂が立体的に立ち上がってくるのだ。「通常の切子の刃ですと、これだけ大きな面を削ることは難しい。平切子ならではの表現です」と隆行氏。素地の色はどちらもライトブルー。非常に淡い色なのだが、このブルーが効いてくるのは透明の液体を注いだ時。飲み物がふわっと濃いブルーに染まる様子は何とも言えず神秘的だ。“赤薔薇”には金赤、“青薔薇”にはインディゴブルーの色被せを施しており、「赤薔薇はブルーとの鮮やかな対比を、青薔薇は異なるブルーが溶け合う美しさを堪能してほしい」と語る。

■薔薇の間がどこまでも…！お酒を注ぐと現れる“秘密の場所”
あまりにも繊細で美しい砂切子の酒器。「勿体なくて使えない」という気持ちもわかるが、実はそれこそが非常に勿体ないこと。「薔薇の大聖堂」が魅力を最大限に発揮するのは、実際に“使う時”なのだ。日本酒などの透明な酒を注いだら、まずは〈真上〉から眺めてみてほしい。酒を注いだ途端、側面の窓枠がくっきり鮮やかに浮かび上がってくる様子は、大聖堂が長い眠りから覚めたような不思議な感覚をもたらしてくれるはず。次は少し〈斜め上〉から。するとどうだろう、大聖堂の薔薇の床がどこまでも連なって見えるではないか…！五角形の小さな大聖堂が360度無限に広がる様子はまさに幻想世界。それは言うなれば、酒を愉しむ時にだけ現れる自分だけの“秘密の場所”だ。「日本酒はもちろん、白ワインもグラスの世界観とマッチしてオススメです」と隆行氏。あえてウイスキーなどの琥珀色を注いでみるのも一興だ。赤薔薇と青薔薇、どちらの世界に迷い込むかはあなた次第。一人でゆっくりグラスを傾けたい夜は、“秘密の場所”を訪れて。