レトロモダンな雰囲気を醸すオリジナルカラーのガラスに
縁起のよい模様が優美に刻まれた薩摩切子のオールドグラス
■酒を注いだ時に完成するアンバーカラーの薩摩切子
酒を注いで初めて完成するグラスがある。氷と酒がクリスタルの輝きの中に少しずつ溶け込み、えもいえぬ奥行きと色気を見せる「薩摩びーどろ工芸」による薩摩切子のオールドグラスだ。江戸時代にかの篤姫の養父であった島津家28代当主・島津斉彬が海外交易品として開発させた「薩摩切子」。彫りの深さを変えて切子に優美なグラデーションを生む「ぼかし」や、独特の鮮やかさがある紅色ガラスなど、どこか侘び寂びを感じる意匠で諸外国から珍重されていた。ところが斉彬の急逝や薩英戦争での工場の消失などによりわずか20年足らずで終焉。一時は幻の美術品となっていたが、斉彬の夢を引き継ごうと第一級の職人が集結し、100年の時を経た1985年、見事に復元を果たした。今日では鹿児島県伝統工芸品にも認定され、鹿児島が誇る銘品の一つとなっている。
■類稀な美しいブラウンを生み出す職人の二人三脚
「薩摩びーどろ工芸」は薩摩切子の復元に携わった吹き師(ガラスの生地を作る職人)が立ち上げた工房。ゆえにガラスの美しさには定評があり、切子業界初の黒を使った「薩摩黒切子」でもその名を馳せる。薩摩切子の製造は吹き師と模様を入れる切子師の分業制が一般的だが、同社では両者が二人三脚で製造を行う。竿先へと伝える息吹と手に伝わる感覚を頼りに生地を作る吹き師と、砥石の振動や音に神経を研ぎ澄ませて模様を施す切子師。互いの卓越した手技とあうんの呼吸が薩摩黒切子をはじめとする唯一無二の色とグラデーションを可能にしている。アンバーカラーの「薩摩ブラウン」の開発では、発色を優先するとガラスが硬く切削ができず、切削を優先すると納得のいく色が出ないなど試行錯誤の連続。だが苦心の末に生まれたそれは伝統を踏襲しつつも既存の薩摩切子にはない革新的な色となった。
■歴史・文化の深さに思いを馳せながら酒を飲む
薩摩切子の最大の特徴である「ぼかし」は、透明ガラスの上に色ガラスをかぶせた「色被(き)せガラス」に深さを変えてカットを施すことで現れる。カットの量を調節することで、色ガラス層の厚みが変わり、濃色から透明へ移り変わる独特の優美なグラデーションが表現できるのだ。原料のクリスタルガラスは海外の高級グラスブランドでも使用されるもので、その透明感や光沢の美しさは世界に誇れる仕上がり。さらに菊花文や亀甲文の切子模様は、ただ美しいだけでなく邪気払いや長寿の意味が込められている。かつて菊の花を浸した日本酒を飲むことで長寿を祝ったように、このグラスで酒を飲む人の幸せを想って刻まれているのだ。焼酎はもちろん、ウィスキーのような洋酒も楽しめるロックグラス。氷の溶け具合によって移り変わる切子の表情や、グラスにこめられた歴史・文化の深さに感じ入りながら飲む酒は、また格別のものとなるはずだ。
アイテム詳細
製造国:日本(鹿児島県)
素材:クリスタルガラス
本体サイズ:口径7.5cm、高さ8.5cm
箱サイズ:横10.5cm×高さ12cm×奥行き10.5cm ※木箱入り
※全て職人による手作業で作るため、重さや厚み、色の濃さが一つ一つ微妙に異なります。あらかじめご了承ください。
※まれにガラスの中に泡などの混入物がありますが、品質上の問題はございません。
<使用上のご注意>
※薩摩切子は耐熱ガラスではありません。熱湯を注ぐと割れますのでご注意ください。
※クリスタルガラスは柔らかいガラスです。ガラス同士を当てないでください。
※食器洗浄機、電子レンジ等は使用しないでください。
<お手入れについて>
※食器用洗剤を溶かしたぬるま湯に浸し、スポンジか布で丁寧に洗ってください。
※カット面は時々柔らかいブラシで洗ってください。