無色透明という異色の薩摩切子が描く美しきカットと意匠
コロンとしたシルエットも愛らしい「猪口」
■無色透明という薩摩切子の新たな潮流「霧島切子」
ダイナミックさと繊細さを併せ持つ模様。それを引き立てるコントラストの強い陰影。一つ一つはシンプルなのに思わず見入ってしまうカット。霧島(きりしま)切子の「猪口」は、小さいながら切子の美しさの詰まった酒器だ。霧島切子とは弟子丸氏考案のオリジナル切子。切子師である弟子丸努氏が代表を務める「美の匠 ガラス工房 弟子丸」が元バーテンダーの吹き師の協力の元に開発したという。島津家藩主・島津斉彬が江戸時代に海外交易品として開発させた「薩摩(さつま)切子」の製法を踏襲しつつも、その枠に捉われない自由な発想で新たな切子を提案している。たとえばグラスの周囲に施された伝統的なトライバルの模様。通常の薩摩切子には用いないサンドブラストという技法でガラスを乳白色にすることで質感にモダンな印象が加わった。
■伝統の技と美の復元を経て故郷で新たな歴史を刻む
かつて諸外国でも賞賛された薩摩切子だったが、創始者である島津斉彬の急逝や幕末の動乱によりわずか20年足らずで終焉。しかしその100年後の1985年。大手のガラス工場の職人らが集まり、島津家の歴史資料館に収蔵されている現物や当時の文献、調査記録を元に研究を重ね、見事復元。弟子丸氏はその復元に携わることから職人としての人生をスタートさせているという。その後別の工房へ移籍し工場長を務めたのち自身の工房を設立。職人人生は30余年を数える。弟子丸氏の信条は「炉火純青」。炉の火炎が純青になると温度も最高に達するように技芸が最高の域に達することを表すという言葉には、彼の職人としての蒼き情熱が込められている。過去の功績に驕ることなく技と感性を磨き続けるからこそ、薩摩切子の新たな歴史を刻むことができるのだろう。
■酒の香りや色をより豊かに愉しむカットとシルエット
霧島市政10周年であった2015年は奇しくも弟子丸氏が職人になって30年目、工房設立から5年目という節目の年でもあった。そこで霧島連山の名峰やその麓の温泉をはじめとする霧島の美しい自然への想いを込めて「霧島切子」と名付けた切子を考案。切削の美しさを際立たせるため色はクリアを採用した。彫りの深さを変えることで生まれる独特のグラデーション「ぼかし」や、「薩摩の紅硝子」と呼ばれた日本初の紅色のガラスなど、「色」が魅力の薩摩切子をあえて無職透明で仕上げることで切子師・弟子丸の技が一層強いコントラストを持って輝く。サイズは小さくも巧みの技が存分に詰まった華麗な猪口。酒器としてだけでなく玉露などをいただく際の茶器にするのもまた一興だ。新しい時代の切子を日常使いできる愉悦をぜひ堪能してほしい。
アイテム詳細
素材:クリスタルガラス
本体サイズ:縦5.5cm、直径6.5cm
化粧箱サイズ:縦9.5cm、横9.5cm、奥行9.5cm
本体重量:約150g
化粧箱+商品本体重量:約250g~300g
製造国:日本
※食器用洗剤を溶かしたぬるま湯に浸した柔らかいスポンジか布で丁寧に洗って下さい。カット面は柔らかいブラシで軽く洗って下さい。
※ガラスのくもりを防ぐため、洗った後ぬるめのお湯で充分にすすぎ水滴を良く拭き取って下さい。
※ガラスは、傷がつきやすい性質ですのでガラス同士を直接あてないようにして下さい。
※ガラスは耐熱・強化ガラスではありませんので急激な温度差に弱く熱湯を注ぐと破損する恐れがあります。また氷を入れる際も先に水から入れて下さい。