「ゴールデン匠賞」受賞者が生み出した、カレー好きへ贈る「黒の衝撃」
経年変化も楽しめる、一生モノの漆のお皿
■カレー皿には……「漆」が新定番!?
どのご家庭にもきっとあるはずだ、カレーを食べるときにはこれを使うと決めている「カレー皿」が! カレーといえば白い皿を使う? いやいや今回届いたアイテムのように奥行き深い表情をした渋好みの皿もなかなかオツだ。しかもこちら陶器でも磁器でもなく、なんと漆を塗り重ねたもの。さらにはいわゆるつるりとした「漆器」の姿ではなくややザラザラとしていて、他ではおよそ見たことないものとなっている。これはいったい何か?「擦れに強い硬度を生みだしたので、漆なのに金属のカトラリーを使えるんです。また、洗い方や保管もそれほど気を使わないで済む。なによりこうしたナチュラルなテクスチャーのほうが、現代の人に求められている気がしますね」とは輪島キリモトの桐本泰一氏。従来の輪島の漆器とは異なる革新的なアイテムを発表して注目を集めている人物だ。こちらの「小福皿」も桐本氏が手がけたアイテムのひとつ。長く使うほど愛着が湧くこの皿の秘密を紐解こう。
■革新的な漆で「ゴールデン匠賞」を受賞した7代目
輪島キリモトの歴史は古く、江戸時代までさかのぼる。1700年代後半に初代が漆塗りを生業としてから連綿と続き、5代目で漆製品のベースとなる木地の作り手に。7代目の桐本氏はプロダクトデザインを学んでおり、モットーとするのは「暮らしの中で使う漆製品」を作ること。工芸品として美しさへの評価が上がるにつれ「ハレの日」にだけ使うようになってしまった漆製品を、日常的に使ってもらうにはどうしたらいいか? そんな課題を解決すべく生み出したのが「蒔地」技法だ。通常の漆器の下地に使う「輪島地の粉」を表面に近いところでもう一度蒔き、漆を塗り重ね、スプーンやフォーク、ナイフを使っても傷が付きにくいほどの硬度を実現した。そうした取り組みが評価され、桐本氏は伝統工芸分野の革新的な人物として2018年に「三井ゴールデン匠賞 グランプリ」を受賞している。
■「千すじ」の味わい深い姿、そして大胆な経年変化
日常の漆器として2000年に発表したのがこの「小福皿」。「お客様の『漆は扱いにくいから』という声を解消したかったのと、私自身が大のカレー好きなもので、かねがね漆の器で食べたいなと思っていたので製品化しました」(桐本氏)。今回の「小福皿・千すじ」は蒔地技法を発展させた「千すじ技法」による表現で、2012年から展開している。これは「輪島地の粉」と漆を混ぜたものを表面に塗る際に、特殊な刷毛ですじ模様を描いたもの。この模様のおかげで料理を盛り付けたときの見た目の調和がさらにアップした。「ねず」「ベンガラ」とも、最終仕上げには色漆を2回、仕上げの漆を6回も塗り重ねる時間がかかる工程を経てできあがる。どちらも初めは黒が強くあまり色の違いがないが、実はここからの経年変化が見ものだ。使い続けるうちに黒の透明感が増していき、最終仕上げの色漆の色がはっきりと出てくる。そうしてねずはオリーブ色、ベンガラは赤茶色にと大きく変化を遂げていくのだ。愛着を持って使うことで、育つように経年変化するうれしさ・楽しさは、ものを長く大切に使い続ける方ならおわかりだろう。
■料理が映える! この漆の皿は、一生愛せる
すじ模様のテクスチャーと、この艶消しの表情。新しいような古めかしいような、独特な表情に料理が映えて、ご飯の白も多色の野菜もおいしそうに見せる効果がある。「中」はぜひカレー皿に使いたいサイズ。大人の一人前がちょうど入るくらいの大きさで、カレースプーンをガシガシ使って遠慮なくかきこみたい。「大」はパスタやワンプレートディッシュに。あえて余白を大きく取って盛り付けるのもオシャレで良し。フチがあるため、カレーやパスタを最後まですくいやすいのもうれしいところだ。もちろんどちらも使い方を限定することなく、普通のお皿として多用途に使えるから、ひとつだけ持っていても便利に使えそうだ。漆だから10年・20年経っても塗り直しができ、大事に使えば一生モノ。料理が映える黒の皿を最上級にスペシャルにしたこちら、使い勝手を実感していただきたい。
バリエーション
※「ベンガラ」の実物は、写真よりもやや赤茶を帯びています。
ディティール
色・大きさ比較
使用イメージ
アイテム詳細
素材:木地/ケヤキ又はセン、塗装/天然漆、珪藻土を焼成粉末した輪島地の粉、綿布
サイズ:
中/直径196mm×h40mm
大/直径243mm×h48mm
重量:
中/170g
大/330g
製造国:日本
※漆器ですが、ガラスのコップや陶器の皿を洗うように、水やぬるま湯で薄めた洗剤を使い、スポンジで洗い流すだけでOKです。アクリル毛糸で編んだたわしを使えば、洗剤も不要。
※ガラス等の堅いものや、先のとがったものが当たると、塗膜が傷ついてしまいます。器を洗う場合は、漆器だけ別にして洗っていただくとより綺麗に保てます。
※洗った後は、洗いざらしの木綿の布巾やタオルなどで拭きます。水滴を残したままにしておくと、水道水の中に含まれるカルキ分が残り、色味の濃い漆器の場合、白っぽいものが目立ってしまいます。
※天然木と本物の漆でつくられた漆器は、食洗機や乾燥機、電子レンジを使えません。急激な衝撃、乾燥を与えると、塗膜や木地が傷んでしまいます。
※漆は湿度70~80%、温度25度という環境の中で最も固まります。乾燥した環境におくことは、漆器にとって、一番つらく、悲しいことなのです。毎日使うこと、洗うことが結局は漆に必要な水分を補給してあげることになり、何よりのメンテナンスになるのです。また、紫外線に長時間あたると変色の原因となります。直射日光の当たらない場所に保管ください。
※長年使って傷がついたり、欠けが出た場合でも、しっかりした木地に丁寧な下地が施された漆器なら、直すことができます。うるしとは、直しながら使っていく、生活の道具なのです。