広島・福山のデニム生地メーカー、カイハラが「ぜひ魅力を伝えたい」と力を込める茶綿のデニム生地。それがいままさに「茶綿デニムプロジェクト」として動き出した。しかし茶綿という言葉はヴィンテージ・デニムマニア以外は聞き慣れないものだろう。そこでここでは茶綿の魅力を詳しく伝えていくとともに、デニムメーカー・カイハラの取り組みの凄さ、驚きの縫製工場現場レポート、完成したジーンズの特徴など、デニムやジーンズを多面的に語り、「茶綿デニムプロジェクト」の全貌を解き明かしていきたい。
デニムのエキスパートが取り組んだ
「茶色い綿」への熱いまなざし
世界屈指のデニム生地メーカー、カイハラ。圧倒的な国内シェアを誇り、数々の海外のハイブランドのデニム生地を手がけている。提供しているブランド数はなんと300以上。また取引社数が多いだけではなく、プレミアムデニム市場で他の追随を許さない存在感を放っているのがすごいところだ。そんなカイハラが近年注目しているのが、「茶綿」を使ったデニム。現代のデニムではきれいな白色の綿が使われることが多いが、かつては茶色がかった綿も普通に使われており、それを糸にし、デニム生地にして、ジーンズを作っていた。ヴィンテージ・ジーンズならではの「あの」風合いは、織りによるものだけではなく、実は綿の色の影響もあったのだ。デニム好きの間でさえも決してメジャーではない茶綿を使ったデニムは、カイハラのこうした分析によって誕生した。ただしここではまだ芽が出ただけの状態だ。
井浦新氏と共同で始動!
茶綿デニムを世に問う
ここでプロジェクトのもう一人のキーマンにご登場いただこう。俳優・クリエイターとして活躍する井浦新氏だ。話は数年前、井浦氏がカイハラの工場へ赴いたときまでさかのぼる。美しい山あいの環境、広くて清潔な工場、なによりも24時間体制で紡がれる糸や、数々の種類のデニムが織られていく様子……。10代からファッションに携わり、そもそもが筋金入りのデニムラバーである井浦氏は、そんなカイハラの工場の様子に感銘を受ける。そして自身のブランドである「ELNEST CREATIVE ACTIVITY(エルネスト・クリエイティブ・アクティヴィティ)」で、現在もなおシーズンごとにカイハラのデニム生地を使ったアイテムを発表するなど、深い関係を築いてきた。
その両者の中で関心が高まってきたのが、茶綿によるデニムを世に出すアイデアだった。デニムのルーツでありながら、先述のとおりあまり人々に知られていない茶綿の存在は、実はデニムの可能性をさらに広げてくれる生地なのではないか。リジッド(生デニム)からはき込むことで、色落ちして茶の色合いがより際立ち、初めて真価を発揮するという経年変化の醍醐味を味わえるのも面白い。そんな観点で両者の意見が一致し、カイハラと井浦氏が水面下で進めてきたこの「茶綿デニム」プロジェクトがようやく日の目を見る。それが今回完成したジーンズというわけだ。次回は茶綿がどうしてヴィンテージの風合いを出すのかを探っていきたい。
第二回 茶綿デニム生地がヴィンテージなワケ >>
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