広島・福山のデニム生地メーカー、カイハラが「ぜひ魅力を伝えたい」と力を込める茶綿のデニム生地。それがいままさに「茶綿デニムプロジェクト」として動き出した。しかし茶綿という言葉はヴィンテージ・デニムマニア以外は聞き慣れないものだろう。そこでここでは茶綿の魅力を詳しく伝えていくとともに、デニムメーカー・カイハラの取り組みの凄さ、驚きの縫製工場現場レポート、完成したジーンズの特徴など、デニムやジーンズを多面的に語り、「茶綿デニムプロジェクト」の全貌を解き明かしていきたい。第二回は茶綿デニム生地そのものについて迫る。
茶綿を作り続けられるのはカイハラだから
あえての織りで、色に特化した変化を見る
茶綿とは綿の原種とも言われる茶色のコットンのこと。現代の真っ白な綿を使ったデニムに比べて、よりヴィンテージの風合いが感じられる色落ちになる。それを現代に再現すべく、カイハラでは一貫生産の強みを生かし、独自の技術で茶綿デニムを開発した。カイハラで紡績を担当する前原章浩氏はこう語る。「綿は収穫する年によって繊維の色や質が変わりますが、それをできるだけ一定にするため、色々な綿をブレンドして糸にしています。茶綿デニムを作るための糸も同様。今回のデニム生地では、生地の表情を安定させるため、特に繊維が細く長さが揃った均整度の高い綿を使いました」。
一方、ヴィンテージ・ジーンズの生地は、旧式のシャトル織機で織られていることが知られている。それによりデコボコとした生地感と独特の色落ちが生まれるのだ。
デニムにとって生地の風合いは大切な要素だが、今回は茶綿ならではの色合いを全面に打ち出すべく、あえてシャトル織機を使わず、最新の革新織機を使ってベーシックかつプレーンな生地を織り上げた。それについて前原氏はこう話す。「茶綿の色味を生かすため、革新織機を使ってフラットな生地を織りました。均整度の高い生地ですが、あえて太さにバラつきを持たせたムラ糸を使っているため、色落ちした時にナチュラルなムラ感が生まれます。また、革新織機ならではのメリハリのあるシャープなアタリが出るのも魅力。シャトル織機に頼らずともヴィンテージ感を醸せることを知っていただきたいですね。また、デニム特有の色落ちは、インディゴで染色した時に染め残した芯が擦れて露出することで生まれます。今回の茶綿デニム、白綿デニムともに、染め残し部分を大きくとっているので、どんどん色落ちしていく様子を楽しめるのもポイントです」。色に特化したヴィンテージ感の追求。それが今回の茶綿デニムの大きな見所のひとつだ。
ユーズド加工後の驚きの結果
そこにはヴィンテージの風格が!
色が落ちてからこそ茶綿の本領を発揮する。ならば、どんな風に変化するのか見てみたいではないか。そう考えて完成したジーンズをユーズド加工してみたところ、驚きの結果となった。茶綿デニムと比較したのは、白綿(通常の綿)を使い、まったく同じモデルに仕立てたジーンズ。ユーズド加工担当者が「まさかここまで違うとは」とつぶやくほど、茶綿と白綿で色の違いがはっきりと表れていたのだ。茶綿デニムの方は「これぞヴィンテージ!」と呼べるほどの風格をたたえている。これはぜひ、茶綿・白綿の両方のジーンズを手に入れて、ご自身ではき込むことで経年変化させ、ワクワク感を味わっていただきたい。
第一回 「茶綿プロジェクト」発足 >>
第三回 供給先は世界中。カイハラデニムの凄さとは
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