一陣の風をつかまえた。軽やかな輝きが踊る切子
①江戸切子の「風」表現にトライした逸品!
火や水など、江戸切子に自然のエレメントを描写するのは常套ではある。では「風」はどう映し出すのか? ひとつの答えを提示したのが、篠崎硝子工芸所に所属する柳生明氏の「緑風」だ。草や森であろうか、緑の中を吹き抜ける一陣の風をつかまえてみせた。
②風の躍動感が伝わる超絶カッティング
風がビューッと吹いている様子をジグザグとした斜めのカットで表現。緑を埋め尽くす菊繋ぎのクリスタルの輝きもまた、風が巻き起こす躍動を伝えている。
緑も一筋縄ではいかない。素地の硝子を琥珀色にすることで深みを与えるとともに、土や木々を思わせる描写となっている。
風が渦巻く底部分には多弁の菊のカット。吸い込まれるような見え方と、緑や琥珀をより輝かせる光の入り方をもたらしている。
柳生明氏の作品の魅力とは?
誰も見たことがないカットからクラシックな切子表現まで、あらゆる手法を縦横無尽に繰り出して作品を製作するのが柳生明氏の魅力。テーブルウェア部門は今回が初の出展で、彼の技が日常のアイテムに結実した切子を味わえる最良の機会だ。
③抽象表現に切子の可能性を見出す
2020年の江戸切子新作展で東急プラザ賞を、2021年の同展ではグラスウェアータイムス社 奨励賞、第4回北近江サケグラス公募展の山路酒造賞など数々の受賞歴を誇る。「風に揺れる緑」という抽象的な表現に挑戦した今回のぐいのみでも、その技術と創造力をいかんなく発揮している。
④この江戸切子は「アテ」になる!
繊細かつ豪快なカット、風と緑を表現するイマジネーション、下へいくほどに濃くなっている琥珀色のグラデーション……等々、見どころや味わいどころが非常に多い。この切子をお供に酒を飲めば、あっという間に時間がすぎていきそうだ。
柳生 明 プロフィール
㈲篠崎硝子工芸所 切子職人
2010年 (有)篠崎硝子工芸所入社
2020年 第32回江戸切子新作展 特別賞 東急プラザ賞
2021年 第33回江戸切子新作展 グラスウェアータイムス社奨励賞
同年 第4回北近江サケグラス公募展 山路酒造賞
アイテム詳細
素材:クリスタル硝子
サイズ(最大直径×高さ):Φ62×50mm