家族の歴史を刻んでゆく、これぞ“一生モノ”
職人の町・燕に240年伝わる「鎚起銅器」のお茶道具
■道具好き冥利に尽きる!創業当時から愛され続ける茶筒と茶箕
毎日使うものこそ、手入れしながら長く愛用できる品を選びたい。そんな世の道具好きに捧ぐ、“一生モノ”のお茶道具がある。今回ご紹介するのは、新潟県燕市に伝わる伝統技術「鎚起銅器」による「茶筒」と「茶箕(ちゃみ)」。「どちらも遡るのが困難なほど歴史が古く伝統的な道具です。うちでも創業時から変わらぬ工法で作り続けています」と語ってくれたのは、「島倉堂」二代目の島倉政之氏。「まずはこちらをご覧ください」そう言って政之氏が見せてくれたのは、65年以上も前から代々使用しているという茶筒だ。古色を帯びた風格を備えた茶筒は、よく手に触れる部分とそうでない部分との色ムラさえ美しい。一枚の銅板を手で叩いて作り上げる鎚起銅器はその全てが一点モノだが、育てれば育てるほど替えの効かない“究極の一点モノ”へと進化を遂げる。気密性や殺菌性にも長けており、日用品としても一級。「一点モノにして、一生モノ」という、まさに道具好き冥利に尽きる逸品、ぜひとも手に入れてほしい。
■道具から全て手作り。銅一枚から完璧なフォルムを生む神の業
一枚の銅の板を叩いて、まさかこの形が完成するなんて誰が想像できるだろうか? 金属加工において世界にその名を轟かせる新潟県燕市に、240年前から脈々と伝えられてきた「鎚起銅器」。1967年創業の「島倉堂」では、親子二代にわたりその伝統と技術を受け継いできた。政之氏の父である島倉板美氏は鎚起銅器の雄として名高い「玉川堂」で15年の修業を積んだ後、退社。溶接業を営みつつ銅器を作るため準備に時間をかけ、その後「島倉堂」として開業した。銅板に焼きなましを加え、「鎚」で叩いて「起」こすことからその技術が名付けられたという謂れのとおり、工房には常に“カンコン”と銅を叩く音が響き渡っている。頼りになるのは己の経験と勘のみ。鎚起銅器の技術を習得するには、最低でも10年の修行が必要と言われる。また、完璧なフォルムを追求するために道具から手作りするのも「島倉堂」のこだわり。特徴的な表面の細かな凹凸は、銅板を一回一回鎚で叩いた何よりの証であり、大量生産の製品では決して味わえない手作りの温かみがそこには感じられる。
■一日一回“愛でる”を日課に。それはやがて、家族の風景へ―
魅力のひとつである青みがかった深い色合いは、形を作った後に表面に錫を溶着させ青銅の合金層を作ってから、硫化液などの独自の溶液に浸し磨くことで生まれるもの。色合いは季節や気候にも左右されるため、“同じ青”が生まれることはまずないという。そしてたまらないのが、その青が魅せる経年変化である。「できれば一日一回、柔らかい布で乾拭きしてください。きちんと手入れしながら使えば、文字通り“一生モノ”です」(同氏)。銅は錆びやすいイメージがあるが、毎日磨くことで目に見えない段階の錆びを取り除き、程よい艶が生まれ美しい経年変化へつながるという。前述した65年モノの茶筒は「父と母が結婚する以前から使われていたもので、母が手入れする姿も毎日見ていました。そういう風景も含めて我が家だけの道具であり、決して手放せない家宝になっています」と政之氏。渋みのある光沢や絶妙なムラは、一朝一夕では決して纏えないもの。たっぷりと愛情をかけながら、毎日コツコツ育ててほしい。
■カチッと鎚目が揃う心地よさ。職人の“手”が生む精巧なつくり
茶筒の蓋と本体との境目をよく見てほしい。上下の鎚目がぴたりと揃っているのがわかるだろうか。一枚の銅板を叩いてから切断し、それぞれを巻くという、非常に高難度な職人技によって作られているのだ。まず中子(なかご)を作り、その上に本体と蓋を巻いて合わせていくのだが、中子と本体は外れないようにぴったりと、蓋はスムーズに開け閉めできるように若干緩めに作る必要がある。「蓋と本体の鎚目をぴたりと揃わせながら、一本一本手打ちで寸法を調整していきます。そのため、一つの本体には一つの蓋しかはまりません。手作業だからこそ出来る工法です」と政之氏。また、粋なのが茶筒の閉じ方。繋ぎ目の段差に合わせて蓋をはめ、最後にちょっと回すのがポイントだ。「カチッと音が出て、キレイに模様が揃って止まります。ぜひ良い音を立てながら使って欲しいですね」(同氏)。一方の茶箕は絶妙なカーブと鎚目がなんとも贅沢。「切り抜いた銅板の断面は手を切るほど鋭いんです。それを丁寧に研磨し、フチを丸めていきます。シンプルに見えますが、一つ一つ手間をかけて作り上げています」と語る。
■茶葉をさらさら掬う楽しみ。家宝にしたい究極のお茶道具
一本一本職人が手打ちで調整した茶筒は、外蓋・中蓋の二重構造で気密性もバッチリだ。銅は湿気を寄せ付けにくい熱特性を持っており、さらにその熱伝導の良さから保管場所の温度変化にも素早く対応。銅の持つ殺菌作用との相乗効果で、茶葉の鮮度を長く保てるという。茶葉の他にも、ティーバッグやコーヒー豆、スパイスなどの保存にもオススメだ。揃いの茶箕は、日本古来の農具「箕」に似せたふっくらとしたカタチが特徴。しっくりと手に馴染み、茶葉をさらさらと掬う所作も楽しい。「茶箕は中蓋の上に乗せて収納できます。探す手間も無くすぐに取り出せ、衛生的に仕舞えるのもポイントです」(同氏)。茶筒から直接茶葉を振り入れるのもいいが、所作としてはやはり茶箕を使って掬うのが断然スマート。同じく島倉堂の「急須」と共に使えば、日々のお茶の時間がより一層味わい深いものとなりそうだ。どんなに時代が移り変わっても、「我が家のお茶道具はこれ」。そんな風に代々受け継いでいきたい逸品である。
ディテール
使用イメージ
アイテム詳細
【茶筒】
素材:銅
サイズ:胴径75mm×胴高115mm
容量:100g
重量:単体330g、箱付き423g ※個体差があります。
製造国:日本
【茶箕】
素材:銅
サイズ:縦70×42mm
重量:単体30g、箱付き52g ※個体差があります。
製造国:日本
お手入れについて
1日1回、タオルなどの柔らかい布での乾拭きをお願いします。
拭くことにより汚れ・目に見えない段階のさびを取り除き、程よい艶を保てます。
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