主題「7月の夜」。想像をかき立てる黒切子
逸品のモノ語り
- ①夜の帳と輝く空。間(あわい)を切子に
- ②菊繋ぎの天の川。彩る黒と伝統文様
- ③持つ人の想像をかきたてるグラスを
- ④一杯に贅沢な余韻をくれる
①夜の帳と輝く空。間(あわい)を切子に
「夜」。極めてシンプルな名が冠された、渡部聖也氏の黒切子は、暗くなればなるほど際立つ星々の姿をも取り入れ、「夜」ならではの美しさを浮き彫りにした意欲作だ。イメージの中心は「7月の夜」。モノクロームなカットを備に見ていくと、次々に想像がかきたてられる不思議な魅力がある。
②菊繋ぎの天の川。彩る黒と伝統文様
斜めに走る菊繋ぎは、夜を横切る「天の川」を表している。硝子らしい煌めきを活かした意匠だ。
菊繋ぎの天の川の周囲には、王道の伝統文様である矢来と、熟練の技がモノを言う八角籠目を。刃を当てる部分が見えないために、そもそもが高難度なのが黒切子だ。こうした細やかなカットから、職人の技の高さがうかがえる。
透き通るまでに削られた底面には菊花を。グラス上部の黒の部分と透き通る白の部分が交互に映り込む塩梅が絶妙で、グラスに華やかさがプラスされている。
渡部 聖也氏の作品の魅力とは?
2021年 第33回江戸切子新作展では、大賞となる経済産業省製造産業局長賞を獲得した渡部氏。光や色の、事象のグラデーションの表現が絶妙で、表現力の高さで受賞を重ねている。その表現力はさしづめ「移ろいの魔術師」。“何か”のグラデーションを捉え、江戸切子で表現する。その世界観が魅力だ。
③持つ人の想像力で完成するようなグラスにしたかった
「使う人のイマジネーションで完成させるような、余白のあるグラスにしたかった」と渡部氏。物語性のあるグラスは、しっぽり楽しみたい夜にはぴったり。思い出深い夜や考え事をしたい夜に添えてみたくなりそうだ。
④一杯に贅沢な余韻をくれる
このデザインにイマジネーションが刺激されたという方にとって、このグラスで楽しむ一杯の価値は実に高いものとなるに違いない。グラスに込められた余白はそのまま贅沢な余韻となり、ただの晩酌も特別感のあるものになるはずだ。
渡部 聖也 プロフィール
(株)ミツワ硝子工芸所属の切子職人
ミツワ硝子工芸所属の切子職人 職人歴8年
2015年 第27回江戸切子新作展 組合理事長賞
2016年 第28回江戸切子新作展 東京都産業労働局長賞
2021年 第33回江戸切子新作展 経済産業省製造産業局長賞
アイテム詳細
素材:ソーダ硝子
サイズ(最大直径×高さ):Φ86×96mm