藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”を語り合う「ゲストインタビュー」。今回のゲストはifs未来研究所所長の川島蓉子さん。ファッションという視点から時代の先端を見つめ続けてきたマーケッターが考える、魅力的な大人とモノとの関係とは??。
前編はこちら
「手紙を書く」という
上質な時間を過ごす
藤巻 今日、川島さんが持ってきてくださったのは……?
川島 レターセットです。竹尾という紙の専門商社さんのオリジナル商品で、Dressco(以下ドレスコ)というシリーズ。その名の通り、ドレスのように美しい紙の使い方を提案しているんです。
藤巻 これは素晴らしく美しいね。
川島 本当に上質で繊細なレターセットです。メール一本で用事が済んでしまう時代だからこそ、「きちんとした手紙を書く」という時間を大切にしたいし、そういった時に使いたいアイテムだなと思うんです。
藤巻 こういう便せんでお礼状が来たりしたら、グッと来るよね。俺も書きたい。
川島 私もちょっとした手紙魔なので愛用しています。仕事柄、目上の方にお会いしたり、一緒にお食事をする機会も多いんですよね。そういうとき、お礼の手紙を送ると、すごく喜んでいただける。
藤巻 面倒なんだけれど、でも、その面倒なひと手間をかけるというのがいいんだよね。そこにある気持ちが相手に伝わる。
川島 字なんて下手でもいいし、なんだったら堅苦しい挨拶も抜きにしてしまって「ありがとうございました」と一言だけ書いて送ってもいいと思うんですよ。
藤巻 手紙をもらうということ自体が嬉しいんだよね。ましてや、こんな素敵なレターセットでもらったら、ホント嬉しくなると思う。
目上の方への贈り物
としての「手紙」
藤巻 川島さんが“手紙魔”になったのは何かきっかけのようなものがあったんですか。
川島 若い頃から手紙を書くのは苦にならないほうだったんです。時代もあるのかもしれませんね。当時はまだ、レポートや原稿も手書きが主流でしたから。
藤巻 「目上の方にお世話になったらお礼状を出す」というのは親御さんから教えられたんですか?
川島 とくに「こうしなさい」と言われた記憶はないんですが、子どもの頃から母がお中元やお歳暮のお礼状を書く姿を見ていたのが、無意識のうちに刷り込まれているのかも。
藤巻 そういうの大事ですよね。メールのやりとりだけでは、その“親の背中”は見せることができない。
川島 スピードや効率でいえば、圧倒的にメールのほうが優れているんですけど、手紙にしかない良さもある。例えば、目上の方にすごく良くしていただいて、お礼の気持ちを何か形で現したいと思っても、贈り物となると案外難しい。
藤巻 相手の好みもあるし、価格帯をどう設定するかという問題もある。
川島 あまり安っぽいものをさしあげるわけにはいかないし、かといって分不相応に高価なものだと相手を不必要に驚かせたり、かえって気を遣わせてしまうでしょう。かといって、食べ物も手軽なようでいて、選びづらい。
藤巻 お年を召された方だと健康上の理由で食べられないものがあったりもするし、それがご本人にとっては大好物だったりもするので厄介(笑)
川島 そう考えていくと、いちばんいいのが手紙。丁寧に心をこめて書けば、それだけで気持ちが伝わる。最強のギフトだと思います。
洗うほどに心地良い
東京生まれの逸品
川島 もう一つは、メイドインジャパンのタオルです。「UMEAOI」(以下ウメアオイ)という、まだ出来たばかりのブランドで東京の青梅市で作っています。
藤巻 青梅市!? 東京産のタオルですか。
川島 製糸から織り、染色まで全部自社でやっている「ホットマン」というタオルメーカーの商品です。
藤巻 ホットマン、知ってるよ!
川島 ちょっと触ってみていただけるとわかるんですが、ものすごく肌触りが良くて軽いんです。
藤巻 てっきり、今治あたりで作っているんだと想っていました。
川島 今治タオルも素晴らしいけれど、東京にもこんな素敵なタオルを作れるメーカーがあるということをぜひみなさんに知っていただきたくて。
藤巻 ぜひ広めたいね。しかも、ディテールがすごく可愛い。
川島 遊び心がありますよね。歯ブラシを入れられそうなポケットがついていたり、リボンタオルといって、フックに引っかけられるようになってたり。
藤巻 いいね! すごくチャーミングだと思う。良いタオルを使うようになると、気持ちにゆとりが生まれるというか、生活がすごく豊かになる気がする。
川島 タオルは、ともすると消耗品みたいな感覚になってしまうけれど、毎日肌に触れるものだからこそ、ちょっといいものを使うと、とっても気分が良くなる。しかもUMEAOIは長持ちするんですよ。それも、洗濯するたびに風合いが良くなる。
藤巻 使用頻度を考えたら、1枚1500円?2000円ぐらいするタオルも、じつは高くない。
川島 ほぼ毎日使うものですしね。
藤巻 (いくつかアイテムを広げながら)このハンカチサイズのものはこれからの季節に重宝しそうだね。
川島 すごく汗をかく季節も、これ1枚あれば大丈夫です。じつは私は長い間、ハンカチ派だったんです。タオルハンカチってなかなか可愛いものがなくて……。でも、ハンカチは1日中持ち歩くとシワになってしまうし、汗を拭けばすぐびしょびしょになってしまう。そんなとき、試しにUMEAOIを使ってみたら、しわにもならず、吸水性が高くてびっくり。
藤巻 俺も持ち歩こう。すごく可愛い。これは大人の男の必需品ですよ。
川島 プレゼントとしてもおすすめです!
<対談を終えて……藤巻幸大から川島蓉子さんへ>
川島さんと僕は同世代。僕はプロダクトへの興味からファッションの世界に入っ たけれど、川島さんはもともとファッションが大好きで、プロダクトにも造詣が 深い。お互いのフィールドでメイドインジャパンを掘り起こす仕事をしてきて、 そこにかける想いというか、基軸が似ている。長いつきあいの友人であり、同志 なんですよね。川島さんに会うと、途端に「日本を変えてやろう!」と息巻いて いた若造だった自分が蘇ってきちゃう(笑)。パワフルでチャーミングな女友達 にふさわしい男になれるよう、これからも精進します!
■前編『ブランドに流行りすたりはなく、“いいモノ”は長生きする』
ファッションという視点から時代の先端を見つめ続けてきたマーケッターが考える、魅力的な大人とモノとの関係とは??。
川島蓉子
かわしま・ようこ●伊藤忠ファッションシステム株式会社 ifs未来研究所所長。
1961年新潟市生まれ。早稲田大学商学部卒業、文化服装学院マーチャンダイジング科修了。1984年、伊藤忠ファッションシステム株式会社入社。ファッションという視点で消費者や市場の動向を分析し、アパレル、化粧品、流通、家電、自動車、インテリアなどの国内外の企業と、ブランド開発・デザイン開発などのプロジェクトを行う。Gマーク審査委員。多摩美術大学非常勤講師。『伊勢丹ストーリー戦略』『上質生活のすすめ』『虎屋ブランド物語』『モノ・コトづくりのデザイン』など著書多数。