©幸昇選硝
日本最大級の江戸切子の祭典「江戸切子新作展」。実は近年の受賞作には、若手作家たちの顔ぶれが数多く並ぶ。台頭の兆しが表れはじめているのだ。今回はそんな才気溢れる若手作家の中から、急成長を見せる10名が集結!藤巻百貨店初の「若手作家」特集の開幕である。類まれな“新十傑”の作品をとくとご覧あれ。
石塚春樹
石塚春樹氏は「ミツワ硝子工芸」のチーフ職人・伝統工芸士。繊細でありながら抜群の存在感を放つ作品群で、並みいる名人たちの中にいながら、数々の大きな賞を獲得している。作品制作で培ったアイディアや技術を常に次へ活かし、工房の後輩職人への技術継承にも余念がない。研鑽を重ね続け、独創的な世界を見せてくれる注目株の一人だ。
奥波羅幹典
「堀口硝子」所属の奥波羅氏は「切子と光の共鳴による美しい世界」に魅せられ、切子職人の道を選んだ、言うなれば“光の探究者”と呼べる作家だ。2017年にこの世界に飛び込んだ若手ながら、2019年の江戸切子新作展ではグラスウェアータイムス社奨励賞を受賞。自分ならではの光の描写で魅了する、まさしく“新進気鋭”の作家の一人である。
篠崎翔太
「作品としての江戸切子」という個性を確立し、今につながる歴史を築いた2つの巨星、篠崎清一氏と篠崎英明氏を擁する「篠崎硝子工芸所」。篠崎翔太氏はそんな2人の意志を受け継ぎながら、江戸切子の世界をさらに広げようとする3代目である。彼の表現、カットのひとつひとつには確かな「篠崎硝子の遺伝子」が宿っており、新たな芸術家誕生の風を感じさせてくれる。
稀少な琥珀色被せ硝子に宿した「夕陽の名残り」
精緻な「菊繋ぎ紋」がつないだ、2つの黒白の世界
島田佳学
1949年創業の「鍋谷グラス工芸社」所属の島田佳学氏は「切子とは“究極の宝石”であり、輝けるかどうかは職人の腕次第で決まる」そんな信念のもと、伝統紋様を再構築して新しい表現へとたどり着く。永遠に自分に満足せず、常に成長を目指す姿勢で輝きを作る作家だ。新作展では2018年に東京都知事賞、2019年に東京都産業労働局長賞を受賞している。
鍋谷海斗
鍋谷海斗氏は超一流のガラスメーカー「KAGAMIクリスタル」での経験を経てから、圧倒的な重厚感で異彩を放つデザインで魅了する父・鍋谷淳一氏が率いる「鍋谷グラス工芸社」所属となった若手作家。常に目指すのは「見る・触れる・使う、その時々に別々の感動が沸き起こる作品」だ。江戸切子の本質的な魅力を表現する作家である。
三回訪れる切子ならではの感動体験
根本 幸昇
根本幸昇氏は、根本硝子工芸を引き継ぐ三代目。「黄綬褒章」を受けた初代・根本幸雄氏、卓越したカット技術を活かした個性的な作品で名匠となった二代目・根本達也氏。伝説的な二人の技術と感性を余すことなく受け継いだだけでなく、さらに躍進しようとする江戸切子界のサラブレッドだ。新たな時代の訪れを「作品」で証明する、紛うことなき芸術家である。
林涼太
林涼太氏は昭和46年の創業以来、伝統を受け継ぎつつも常に新取果敢な姿勢を貫く「ミツワ硝子工芸」の3代目。幼少のころから常に「江戸切子」が共にある生活を送ってきたがゆえに、修業中の身にして工房の強みが自らの血肉となっている。工房独自のカットマシンを活かし、メリハリの効いた斜輪表現を駆使する作家だ。
「黒切子」の新たな傑作!漆黒とクリアのコントラスト
細小路圭
細小路圭氏は「切子でしかなし得ない表現」を探る若き伝統工芸士。「ミツワ硝子工芸」において同房の石塚春樹氏と切磋琢磨しながら、職人たちをリードする存在だ。「日本の伝統工芸士」に認定されたのは2019年のことだが、数多くの受賞歴を誇る凄腕であり、実力は本物。伝統工芸品という枠にとらわれないユニークな表現で心をつかむ作家である。
柳生明
「作品としての江戸切子」という個性を確立し、今につながる歴史を築いた2つの巨星、篠崎清一氏と篠崎英明氏を擁する「篠崎硝子工芸所」。柳生明氏はそんな同社に、異業種から飛び込んで職人の道をゆきはじめた猛者だ。斬新なデザイン、クラシックなデザインを取り入れ、様々な表現を探求する作家である。
シンプルなのに目が離せない。森が佇む神秘のグラス
これぞ江戸切子!「透き」で味わう煌めきの一杯
山田のゆり
「ミツワ硝子工芸」所属の山田のゆりさんは、江戸切子新作展で数多くの賞を受賞するだけでなく、2020年に最年少で伝統工芸士に認定された才気あふれる若手作家。「自分にとって江戸切子とは、人を引きつけ、見る人の心に希望を与えてくれるもの」と彼女が語る通り、硝子に“希望”を宿して、人々を引き付ける超実力派である。
菊は朝露に満ち、グラスは希望に満ちる。