漆黒の素地に刻まれたシャープな意匠
心くすぐる「黒切子」の新たな傑作タンブラー
■工房の強みを自らの強みとして体現する継承者 林涼太
埼玉県草加市に工房を構える「ミツワ硝子工芸」。昭和46年の創業以来、伝統を受け継ぎつつも常に新取果敢な姿勢を貫く。現在も10名ほどの職人を擁し、20~30代の若手作家が切磋琢磨する活気あふれる工房だ。同社は1970年代から製作を開始、下請けとして黒子役を果たしつつ、平成の時代になってから自社ブランド「彩鳳(さいほう)」を展開し始めた。林涼太氏はこの工房の3代目であり、幼少のころから常に「江戸切子」が共にある生活を送りながら、ついに家業を継いだ存在だ。「今は、どの世代の人も江戸切子『彩鳳』を知っているまでになることを目標に、日々精進しております」(林氏)。自らを「修業中の身」とするが、幼い頃から工房の江戸切子に触れていた分、工房の強みは林氏の強みになっているとも言える。「彩鳳らしさ」を体現する作家だ。
■漆黒の素地にシャープなカットが抜群に映える
「オールドグラス 斜輪菊つなぎ」に次ぎ、林氏が届けてくれた作品は「網目 黒タンブラー」。作品に豊かな表情を与えた“斜輪”と、漆黒の素地との塩梅がやはり本作の最大の特徴であるが、これは「ミツワ硝子工芸」独自に所有しているナナメリング用治具を駆使したものだ。タンブラーにおいては、通常より遥かに濃く被せた漆黒の素地にアシンメトリーの網目紋を施し、コントラストのきいた世界観を演出。中を覗いてみると、外見とは打って変わって、フェードしていくような透明感があるのも面白いところだ。過去にあった「彩鳳(さいほう)」の「よろけ縞文様 オールド 黒」はほんのりと揺らぎのあるデザインだったが、こちらはよりソリッドで、かつシャープな印象がある。渋いカッコ良さをたたえた作品であるといえよう。
■黒切子ならではのソリッド感で、自宅バーに渋みを加えよ
江戸切子ではなかなか珍しい「黒」の切子グラスは、その珍しさや独特の風合いに惹かれたツウな人々から人気を博しているデザインだ。素地が真っ黒であるからこそ、切子の意匠がはっきりと見え、見た目にも楽しい。ただそこにあるだけでも、空間に渋みが加わるような感覚をもたらしてくれる。タンブラー=ビール、ハイボールというのはもはやひとつの方程式ではあるが、色彩のあるカクテルや、アルコールに限らずともジュースやアイスコーヒーなどを味わうのにも良い。“黒ビール”というのも何とも粋な選択だ。今日はどんな色味をチラつかせてみようか、手に入れた暁には、ぜひともそんなワクワクする日々を楽しんでいただきたい。
林 涼太 プロフィール
家業の手伝いとして10代後半から従事
2016年10月 ミツワ硝子工芸 入社
アイテム詳細
素材:ソーダ硝子
サイズ:φ71×H115/250ml
重量:250g
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