どんな料理もシックに映える!
土の躍動を感じる黒のやちむん
■無骨なまでのテクスチャーに心躍る
陶器は、焼成(窯の中で高音で焼く工程)を経ることで強度が増し、はじめて実用的な器に生まれ変わる。釉薬の化学反応により、色彩や光沢も生まれ、元の土の姿とは全く違う息吹が吹き込まれる。姿形を変えても元々は土。その土のままの風合いや質感が極限まで残された器からは、大地に宿るエネルギーがダイレクトに感じられる。
沖縄本島読谷村に工房を構えるヤマモト工房の山本憲卓さんもまた、土そのものの魅力に取り憑かれた作家の一人だ。「石や土のテクスチャーが本当に好き」と語る山本さんの作品は、触ってみたときのテクスチャーが魅力。一度使えばもう虜。デイリーユースとしてガシガシ使いたくなるほどだ。
■焼成で炭を浸透させた「ユニークな黒」
今回我々が取り扱う山本さんのやちむんは、なんとも奥深い黒をまとった器。製作の工程は至ってシンプル。土を成形し、焼きながら燻すのだ。「普通黒い器を作る場合は、釉薬や顔料などで色付けしていくと思うんですけど、この器はシンプル。焼きながら燻しているだけなんです」
元々の土の色は白。しかし一度土を成形した後、白い状態のまま黒い炭の粉末の中に入れる。そして、容器に蓋をした後1200度の灯油窯で焼き上げるのだ。白い器の周りに敷き詰められた炭は、酸素を追い求め器の中に入り込んでいく。芯まで炭が浸透していき、ついにはスミクロの器が完成する。その証拠に、割れた器の破片を見ると、その断面まで黒い。「技法としては昔からあるんですが、焼くことだけで全く色が変わって面白い」まさに焼くことで生まれるミラクルだ。
燻されて現れた姿は、黒でありながらどこか表情豊か。光のあたり具合や陰影によっても印象が変わる黒は、見ていても飽きることがない。
■土そのものの魅力を最大限に引き出す創造性
三重県出身の山本さん。子供の頃から絵や物作りが好きだったという。美術大学を探してたどり着いたのが沖縄県立芸術大学だった。沖縄の自然に魅せられ、沖縄の土を焼いてみたり、実験を繰り返すなどの日々が始まった。
土や石そのものの姿に惹かれ、その素材が持つ魅力や眠っている何かを、”焼く”ことで引き出し、その時生まれるイレギュラーな現象に心躍らせる。そんな山本さんの子どものような好奇心と創意から、想像を超えた器が生み出されるのだ。
土との対話を繰り返しながら生み出される山本さんの器。現在では、世界の有名シェフも愛用するなど、その人気はとどまるところを知らない。
■黒のキャンバスへ大胆に料理を描こう
素材の個性がシンプルに引き出された黒の器。よく見ると皿の淵側はほんの少しだけ色が抜けている。これは焼きの工程で、酸素に触れやすい部分は少しだけ炭が抜けるためだという。そんな程よい表情を見せる本品は、黒とは言えどんなシーンでも使いやすい。色鮮やかな緑黄色野菜を装えば、シックな世界に色合いが映える。明るい色味のソースで仕上げる肉や魚も文句なしに絵になるだろう。
使いはじめの際は、一般的な陶器のように釉薬でのコーティングがないため、油ものを使うとシミになりやすい。気になるようであれば、くるみオイルや亜麻仁油などの乾性油を薄く塗って一晩おけば、全体に馴染んで使いやすくなる。木の器に近い経年変化が得られるため、使っていくうちに自然な艶を帯びて黒の深みが増してくるという。土の表情を楽しみながら、自分だけの一枚に育てていく喜びを味わってみてはいかがだろうか。
山本 憲卓 プロフィール
1984年 三重県出身
2007年 沖縄県立芸術大学卒
2008年 同大学研究生修了
大嶺實清氏に師事後、2016年読谷村長浜にヤマモト工房設立
ディテール
アイテム詳細
素材(本体):陶器
製造国:日本
※手作りの陶器のため、サイズや重量には若干の差がございます。予めご了承ください。
※はじめは白い服などにこすると炭が付着する可能性がございます。ご注意ください。
アイテムサイズ
直径 | 高さ | 重さ | |
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炭皿 | 24.3cm | 1cm | 668g |
個体差について
本商品は、すべてが職人による完全手づくりのため、1点1点サイズや表情が異なります。陶器の「個体差」も味わいや魅力として受け止めていただき、お手元に届いたお品物との出会いを愉しんでいただけますと幸いです。
写真:例 2点の炭皿を並べていますが、どちらも正規品となります。