奈良一刀彫・高橋勇二の干支飾り

伝統工芸品「奈良一刀彫」の名工・高橋勇二氏。手仕事に携わりたいと20歳の時に奈良一刀彫の世界へ。自身の名を冠し独立して以降は、彩色を施す奥様と夫婦二人三脚で作品作りに励んでいる。伝統を踏襲しながらもどこかモダンで愛らしい作風はどこから生まれるのか。高橋氏に伺った。

奈良一刀彫の名工が手がける来年の幸せを願う干支人形

奈良一刀彫の名工が手がける
来年の幸せを願う干支人形

2018年は戌年。「戌」は安産・安全・保護・防御・忠誠・献身をあらわすと言われる縁起の良い干支。そんな新年を寿ぐ準備の一つとしてご紹介するのが奈良一刀彫・高橋勇二の干支飾りだ。奈良一刀彫とは伝統工芸品で、桧や楠などをノミで豪快に彫りあげた上に岩絵の具や金泥で彩色した彫刻のこと。奈良春日大社での祭礼用に作られた人形に端を発し、幕末の名工・森川杜園(とえん)の手で芸術の域まで高められた。秋田出身の高橋氏と奈良一刀彫の出合いは20歳の時。高度経済成長を経たバブル期直前、まさにこれから、形のない投機に熱をあげようとしていた世間のムードとは対照的に「手仕事に携わりたい」と能面師を目指し秋田から関西へ。そこで紹介されたのが奈良一刀彫の川口神泉師だった。

歴史が紡ぐ雅やかな美意識やひたむきな手仕事に魅せられて

歴史が紡ぐ雅やかな美意識や
ひたむきな手仕事に魅せられて

奈良での弟子入り後、師のもとで早朝から深夜まで技術を磨く傍ら、奈良県伝統工芸聴講生として大阪市立美術研究所にも通いデッサンを学ぶなど、芸術性にも磨きをかけていった高橋氏。「古都の歴史や伝統が培ってきた風俗や美意識は奥が深く、どんどん魅せられていきました」。労働時間や勉学の状況だけを聞くと、一見苦労を重ねた下積み時代のようにも思えるが「新しいことを覚えることが毎日が楽しくて仕方なかったですね」と和かに当時を振り返る高橋氏。世界を股にかける現在もその気持ちは全く変わらず「毎晩『早く明日にならないかな』と思っているんですよ」と言う。まさに天職!そうした思いで作品作りに向き合うからこそどの人形も朗らかで愛らしい表情を宿すのだろう。

夫婦のあうんの呼吸で生み出すおおらかで愛らしい表情と佇まい

夫婦のあうんの呼吸で生み出す
おおらかで愛らしい表情と佇まい

独立後は奈良県桜井に工房を構え、夫婦二人三脚で作品作りに励んでいる。奈良一刀彫の制作工程は原木の型取り、荒彫り、仕上げを経て最後に色彩が施される。高橋氏が彫りを、奥様が彩色を監修。とはいえ完全な分業ではなく常に意見を交わし、微調整を繰り返しながら仕上げていく。そうすることで作品の世界観に奥行きや広がりを持たせられるのだという。「独立にあたり自分の名を冠したのは、技術を持つ一職人ではなく、自ら提案・発信できるブランドでありたかったから。今の時代にどんな人形が求められているのか。新たな需要やマーケットを生むことは、技を磨くことと同様に伝統を継承するには欠かせません」と語る高橋氏の言葉通り、近年ではヨーロッパを中心に海外の方への贈答品としても注目を集めている。

“毎年ひとつずつ”のお楽しみコレクションしたくなる干支人形

“毎年ひとつずつ”のお楽しみ
コレクションしたくなる干支人形

高橋氏の作品は伝統工芸品でありながらどこかモダンな雰囲気を醸すのが最大の魅力。カワイイけれど凛として、決してキッチュにはならない。そんな“今”の空気感を繊細に捉えており、同じモチーフでも時代に合わせて少しずつ形を変えているのだそう。独特の柔らかい表情でそれぞれに違った愛らしさを持つ干支人形は、12年かけて十二支すべて揃えていくのも楽しい。素材には「楠」を使用し、香りの良さと桧や桂に比べて変色しづらいのが特徴だ。水干(すいひ)絵具や金泥(きんでい)のあでやかな彩色は見ているだけで心が和む。自宅用としてはもちろん、年末年始の挨拶時のお持たせや、海外の方に日本文化のお土産にもぴったり。贈る相手の幸せを願う想いとともに贈りたい。

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