日本古来より伝わる染色技法「型染め」。その技法を守りつつも新たな挑戦を続ける藤本染工芸。この工房の技術に魅了された映画監督が撮影したドキュメンタリー映像は、海外でも高い評価を得た。半世紀以上に渡る職人技が世界にふたつとない美しい柄の数々を生み出している。
通産大臣賞など数々の賞を受賞
半世紀を越える職人技
日本古来より伝わり、粋で流行に敏感だった江戸町人によって花開いた江戸小紋。その染色技法「型染め」の伝統を今も守り続けているのが藤本染工芸。社長の藤本義和氏は、専門学校を卒業後、18歳で江戸小紋の老舗工房に弟子入り。その後、型紙のコレクターでもあった師に見込まれ、江戸時代より続いた型紙などの一部を譲りうけ、八王子の地に着物や帯などの生地を染める工房をかまえて50年以上が経つ。今は、型染めと、独学で改良を続けた木版染めを中心に、独創的な色彩やデザインの染めができる工房として多くのファンの支持を得ている。東京都知事賞、通産大臣賞など数々の賞を受賞したその技術で、今も新しい挑戦を続けている。
映画で取り上げられ
海外も注目の染めの技法
藤本氏は、日本全国にふたりしかいない木版染めの職人でもある。その技術に魅了された映画監督石井かほり氏は1年にわたって藤本氏の仕事を追いかけ、ドキュメンタリー映画「めぐる」を完成させた。その映画は2007年のホットスプリングスドキュメンタリー映画祭(米国)で唯一の日本作品として招待上映され、海外でも高い評価を得た。伝統を守る一方で、藤本氏は柔軟に現代の感覚を取り入れている。たとえばお客様から「これと同じ柄で全面黄色の日傘を作って欲しい」とリクエストされれば、その要望に応える。ただし、単なる黄色ではなく、さまざまな「黄色」を使って生地をグラデーションに染め上げ、お客様に喜んでもらったという。
この世に2つと存在しない
世界にたったひとつの色と柄
「型染め」は小回りがきくという長所がある。紙製の型紙は数十センチ四方と非常に扱いやすいサイズ。そのため、大きな型で大量生産するシルクスクリーンとは違い、1枚の布に複数の柄を染めることが可能になる。また、1枚1枚型を使って染め、さらに小さな筆を使って色を入れていくため、同じ型を使っていても、微妙にその色合いは異なる。つまり、この世に同じものはふたつと存在しない。「手染めは手間がかかる分、味わいが出て、それが個性になるんです」と藤本氏は語る。実際その個性あふれる日傘を銀座でさしていたお客様が「それはどこで買われたんですか?」と聞かれたと、喜んで報告してくれたこともあるという。
高級夏着物地「綿紅梅」を使った
涼感あふれる極上の日傘
藤本染工芸では、着物や帯の他に、帯揚、下駄や草履の鼻緒といった小物の制作にも力を入れている。中でも羽のように軽いと評される夏着物地「綿紅梅」を染め上げた生地を、涼し気な綿絽で囲んだ贅沢な日傘は、和装にも洋装にもマッチするため人気のアイテム。高級夏着物の生地である綿紅梅は日差しを遮り、通気性がよいため、日傘の素材としては最適。この生地を複数の柄で染め上げることができるのも、小回りのきく型染めならでは。遠目から見ても際立つ柄の美しさと、綿紅梅ならではの高級感あふれる質感は、夏のお洒落で人と差をつけたい人におすすめしたい。また、和装好きな女性や、母の日のギフトとしてプレゼントすれば、心をこめて1つ1つ染め上げられた生地が、贈る人の思いを届けてくれる。