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工業デザイナー 奥山清行

藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”について、とことん語り合う「ゲストインタビュー」。今回ははエンツォ・フェラーリ等のデザインを手がけた世界的デザイナーであるKEN OKUYAMAこと、奥山清行氏にデザインとモノづくりについて伺った。(前編)後編はこちら

世界に冠たるデザイナーが考える
“プロ”の条件

藤巻 奥山さんといえば、“イタリア人以外で初めてフェラーリをデザインした男”として有名だけど、じつは電車、携帯電話、家具、食器、カトラリーなど、じつに多種多様な分野のデザインを手がけているんだよね。
奥山 今の仕事は大きく分けると、企業向けコンサルティングとKEN OKUYAMAブランドでのモノづくりという2種類あります。
藤巻 コンサルティングというのは主にどんなことを?
奥山 生意気なことに、大手企業が抱える問題を探ったり、そこでわかった課題を深掘りし、解決策を一緒に探すといったことをします。うちのように製造から販売までやっていて、しかも、いろいろな業界に携わっていると、業界の常識=世間の非常識という構図が見えてくるんです。

藤巻 初めて自分のブランドで作ったものは……?
奥山 眼鏡です。7年ほど前から福井県鯖江市にある会社と一緒に企画し、KEN OKUYAMA EYESというブランドを立ち上げました。
藤巻 眼鏡っていいですよね。男性のファッションアイテムとしてもっと浸透させたいし、眼鏡自体ももっとおしゃれで、惹かれるデザインのものが増えて欲しい!
奥山 僕たちの眼鏡は定価8万7500円と決して安くはないんだけれど、おかげさまで好評で、ヨーロッパにも輸出しています。
藤巻 まさに、ハイクラスの眼鏡だよね。
奥山 商品イメージを図面に起こすのはもちろん、製造現場にも足を運ぶし、売り場のディスプレイ、カタログも作ります。
藤巻 すごいなあ。周囲に驚かれません?

奥山 『奥山さん、そこまでやるんですか!?』とよく言われます。でも、実はごく当たり前のことをしているだけなんですよ。気難しい顔をして形だけスタイリングし、“自分の作品”だなんて言っているヤツはプロのデザイナーとは言えない(笑)。


デザインとは他人様の金を使って行う創意工夫である

藤巻 僕ね、改めて奥山さんに聞いてみたいことがあるんですけど、いいですか。
奥山 (姿勢を正して)どうぞ。
藤巻 「デザイン」とはそもそも、どういうものなんでしょうか。
奥山 「自分たちの生活を良くしたいと思ってする創意工夫」です。他人様のお金を使って、モノやサービスを生み出すことでもありますね。
藤巻 なるほど。
奥山 アートの場合は本来、自分のお金で自分のやりたいことをやるわけだから、儲ける必要がない。実際のところ、ほとんどのアートはまず売れない。運が良ければ……という世界ですよね。でも、デザインは違う。他人様のお金を使う以上、利益を生み出す必要がある。お金に始まり、お金に終わる。その意味でいうと、デザインの仕事は金融業によく似ているんです。
藤巻 自分がデザインしたものでも、自分の作品ではない、と。
奥山 もちろん、制作費以上のものをつくるためには作家性やデザイナーの個性といったものが必要になることが多いです。ただ、それはあくまでも手段であって目的ではない。目的はあくまでも、クライアントにお金を儲けていただくことであり、買って下さった方に“買ってよかった”と思っていただけるようなものを世に送り出すことなんです。
藤巻 深いですね。

奥山 日本企業の多くは“デザイン”にコストを費やすことを避け、結果としてあまり魅力的ではないものが市場に溢れている。でも、これはデザイナー自身のせいでもあるんですよ。
藤巻 例えば、どのような……?
奥山 企業を動かすには、「これだけ投資してもらえれば、こんないいものを作り、これだけ儲かりますよ」と数値化し、プレゼンする必要があるんです。でも、日本のデザイナーはたいていそこまではやっていない。 海外ではスタンダードな方法なんですけどね。


黒Tシャツにジャケット姿で
取材現場に現れた意外な理由

藤巻 最近、プライベートで何かハマってることはありますか。

奥山 バイクですかね。今日も乗ってきたんですけど、派手に転んじゃって……傷見ます?(笑)
藤巻 え!?
奥山 ホントはね、スーツを着てこようと思ったんですけど、あまりにも傷がひどくて着られなかったんですよ。Tシャツも多少、血がついても目立たないよう黒にしました。
藤巻 何やっているんですか!(笑)
奥山 岩や崖などを走る「トライアル」と呼ばれる競技バイクを始めて、去年はレースにも出たんですよ。でも、今日乗っていたのはモトクロス。トライアルは失敗すると岩に叩きつけられるので打撲や骨折するんですが、モトクロスは林道を走るので転ぶと、擦り傷がひどいことになる。肉がえぐられちゃうんです。
藤巻 ええ!? もの凄く本格的じゃないですか。いつから始めたんですか。

奥山 オートバイ自体はだいぶ前から乗っていたけど、こんなに真剣にやるようになったのはここ数年ですね。遊ばずに徹底して働く時期と、フィールドを広げる時期が順繰りに訪れるような感覚があって、今はマジメに遊ぶ時期だなと思って。(腕の擦り傷を見せながら)その途端にこれですよ(笑)。
藤巻 (秘書に向かって)俺って、ものすごくマトモでマジメだよね。秘書が入れたスケジュール通りに働く日々ですよ!
奥山 うちの会社なんて、チーフデザイナーがバイクレースに出て右手を折って帰ってきますからね。利き腕なのに!
藤巻 自由ですねえ。
奥山 自由は自分で勝ち取るものです(笑)。
藤巻 そんなところに、デザインの本質があったとは!でも、確かに、遊びがあるからこそ生まれてくる発想ってありますね。
(後編へ続く)




■後編『職人との出会いが生み出した至高のアイテム

奥山清行
おくやま・きよゆき●工業デザイナー。1959年山形県生まれ。エンツォ・フェラーリ、マセラティ・クアトロポルテなど、数多くの自動車を手掛けてきた世界的カーデザイナーとして知られる。2007年に株式会社KEN OKUYAMA DESIGNを設立、代表に就任。自身のブランドである「KEN OKUYAMA CARS」(自動車)、「KEN OKUYAMA CASA」(家具インテリア)、「KEN OKUYAMA EYES」(眼鏡)を展開。アートセンターカレッジオブデザイン工業デザイン学部(米)、多摩美術大学、金沢美術工芸大学、山形大学工学部などで教鞭を執る他、各地で講演も行う。『人生を決めた15 分 創造の1/10000』『ムーンショット デザイン幸福論』(武田ランダムハウスジャパン)など著書多数。
http://www.kenokuyamadesign.com/

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