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服飾史家 中野香織

藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”について、とことん語り合う「ゲストインタビュー」。第一回のゲストは服飾史家の中野香織さん。英国・ダンディズムの専門家である中野さんに、男のファッションと美学について伺った。(後編)前編はこちら 中野香織さんの通好みな逸品はこちら

いいモノには持ち主の“幅”を広げるパワーが秘められている

藤巻 同じようなアイテムを持っていても、人によってひどく野暮ったく見えることもあれば、すごく素敵に見えることもありますよね。どうしてだと思いますか?
中野 最終的には「どの程度、自分と向きあっているのか」に尽きるんだと思います。でも面白いことに、買ったときはどこかちぐはぐに見えていたとしても、時間が経つにつれて似合ってくることもあるんですよね。
藤巻 モノによって育てられることもある。
中野 最初はぎこちなくても、持ち主の愛情が強いと、キャラクターとして成立しちゃうことって案外ありますよね。“いいモノ”には人間の幅を広げてくれる力があるんだと思います。
藤巻 その話を聞いてホッとしました。じつは僕、伊勢丹に勤めていて月給がいくらもない頃に、エルメスでベストを買っているんです。8万3000円という金額は当時の僕にとって大金だったけれど、どうにも気になって仕方がない。結局36回払いで買ったんですが、当時は何と合わせてもしっくり来ない。鏡に映る自分を見ても、我ながら滑稽なんです。でも16年経った今は「いいですね」と褒められるようになった。
中野 圧倒的な撞着があったからこそ、ですね。
藤巻 こういうアイテムを持つと、“幅”を広げてくれるのではないかという、おすすめのものはありますか。
中野 風呂敷を手際よく扱える男性は素敵ですよ。
藤巻 ワインも包めるし、旅行バッグにもなる。柄も可愛いしね。
中野 風呂敷をするりととく仕草も色っぽいんですよ。こんな風に脱がせるのかなと、想像をかきたてられちゃう(笑)。
藤巻 ということは、もたつくのはマズいわけですね。
中野 そうそう(笑)。

「美」として、捉えられるかどうかは
解釈次第。人間のうつわが問われる

藤巻 ファッションに限らず、日常生活の中でも「美意識」ってすごく重要だと思うんですよ。
中野 そうですね。
藤巻 でも行き過ぎると自分の価値観を押しつけることにもなりかねない。そのあたり、中野さんはどんな風に考えていらっしゃいますか。
中野 学生にもよく話すんですが、じつは形そのものには「美しい」も「醜い」もないと思うんですよ。「美しい」とするかどうかは、その人の捉え方次第。どのように解釈するのかというところに、人としてのキャパシティが問われる。ピカソがいい例ですが、どのようなものでも美しいことにしようと思えば、できてしまう。それは人間の可能性が無限である証でもあります。

藤巻 なるほど。
中野 こういう形で、こういう色をしているのが「美」であると定義するなんて、セコくてバカらしいでしょ?(笑)
藤巻 ワハハハハ。確かにそうですね。でも、時には「さすがに、これはない!」というものに出くわしたりもしませんか。
中野 今は「ない」と感じるものも、時代が変われば美しく見えるかも。人間的に深みを増すことで、美しいと感じられるようになるとか(笑)。
藤巻 そうか。人間的に未熟だから、そこにある美を捉え損ねた、と。
中野 最後は愛ですよ。神のような気持ちで「この世に存在するものはすべてOK」と温かく見守る(笑)。
藤巻 最後に、日本の男性がより魅力的になるためのアドバイスをお願いします。

中野 もっとたくさん恋をしなさい、ということに尽きますね。といっても、「俺たちつきあってる?」と四六時中確認しあっているような幼い恋愛ではダメですよ。必要なのは、破滅を厭わないような恋。
藤巻 ああ!
中野 ある一線を超えると、腹が据わりますから。それが男の色気につながるんです(笑)。


<対談を終えて……藤巻幸大から中野香織さんへ>

中野香織さんと知り合ったのは確か、僕がオヤジのように敬愛する島地勝彦さんの紹介だったように記憶しています。「もの凄い美人学者がいるぞ」という島地さんの言葉通り。いや、言葉以上の方でした。歴史に造詣が深く、ウイットに富んでいて、しかもお茶目。面白すぎる!これまで何人もの女性と知り合ってきたけれど、俺を圧倒した女性は東野香代子さんと中野香織さんくらいですよ。燦然たるオーラを放っている。男もね、負けていられないなと思います。ホント、素晴らしい時間をありがとうございました。

~中野香織さんのゲストインタビュー~

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■前編 『「起源」のおかしみを味わいつつ おしゃれに取り入れるのが“紳士”


中野香織
なかの・かおり●過去2000年のファッション史から最新モードまで、幅広い視野から研究・執筆・レクチャ—を行っている。東京大学大学院修了、英国ケンブリッジ大学客員研究員を経て、文筆業。2008年より明治大学国際日本学部特任教授。著書に『モードとエロスと資本』(集英社新書)、『ダンディズムの系譜 男が憧れた男たち』(新潮選書)、『愛されるモード』(中央公論新社)ほか多数。

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