京都の老舗が魅せる
“京鹿の子絞染め”
万葉時代から続くといわれている“京鹿の子(きょうかのこ)絞”の伝統を一筋に守り継ぐ、京の絞り染めの老舗「片山文三郎商店」。絞り部分だけが染まらずに残ることで文様を生み出すこの技法は、京都の代表的な染色技法として京友禅や西陣織と並びよく知られている。かつて、文様を染めるには“京鹿の子絞”しかなかったといわれるほどその歴史は古い。この伝統ある技術を継承する片山文三郎商店は、絞りの衣類や照明など幅広い商品を展開する。絞り染めのとがった部分が特徴的な商品は、日本らしい様式美が共感され、海外で発行される世界的に有名なインテリア雑誌でも紹介されたり、世界屈指の近代美術のカタログに掲載・販売されるなど、海外でも高い評価を得ている。
伝統を継承、進化させる
片山文三郎商店
大正4年、片山文三郎氏が絞呉服製造業を創業。明治生まれの職人気質で絞呉服の製作、技術開発の向上に努めたことがはじまりだ。京鹿の子絞の伝統を呉服という形で守り続ける一方で、手絞りならではの多彩な魅力を現代に伝えたいと三代目当主・片山一雄氏は語る。「京鹿の子絞の技術を使った絞り染めは、文様が子鹿の斑点に似ていることからこのように呼ばれています。伝統的な技法を用いて、現代のライフスタイルに合う洋服やアクセサリー、インテリアまでを展開しています。みなさまに絞り染めの美しさをより身近に感じてもらたいという想いで、ものづくりをしています」(片山氏)。柔軟な発想から生まれる絞り染めのアイテムは、伝統と現代がミックスされ完成する。
丁寧な手作業の
伝統的な“唄絞り”
リビングの間接照明や廊下灯、オブジェにもなる「絞りあかり DARUMA」。モダンなデザインが目を引くDARUMAは“唄絞り(ばいしぼり)”という古来より伝わる伝統的な絞り染めを現代的にアレンジした技法で、道具を用いて作られている。生地の一つ一つを丁寧に糸でくくり、染め上げることによりシボができ、抜群の風合いを醸し出す。綿糸で巻き上げて絞った形が“ばい貝”に似ていることから“唄絞り”または“貝絞り”と呼ばれている。「今は、道具を使い木綿糸で絞る方法で製作しています。少しずつ糸を縛って凹凸を作る他にはない立体感のある形状は、縛り方によって違ったニュアンスを作ることができます。手仕事ならではの味わいがあります」(片山氏)。
岐阜提灯と京絞りの
コラボが生んだランプ
300年以上の歴史を誇る岐阜の伝統工芸品「岐阜提灯」に、耐久性のあるポリエステルオーガンジー100%の唄絞りのカバーをかぶせれば“DARUMA”をイメージさせるユニークなフォルムの提灯に。絞りの効果により伸縮性に富み、ポリエステル素材なので汚れが気になった場合は水洗いも可能で、シワが気にならないのもうれしい。「絞りの布は変幻自在です。その変化を様々な感性で楽しんでもらいたいです。京都ならではの洗練された感覚を大切に、日々の暮らしの中で絞り染めがより気軽に楽しめる、日常使いの絞り製品をさらに提案していきたいと思っています」(片山氏)。提灯の和紙と絞り染めのカバーを通すことで、よりやわらかく優しい光を放つあかりの繊細な美しさを、ライフスタイルに取り入れて身近に感じてほしい。