ゆれる漆黒のデザイン。菊花のたゆたいが透ける
①究極の引き算で「黒」の魅力を引き出す
江戸切子は鮮やか/華やかな世界観が特徴のひとつだが、その中でひときわ異彩を放っているのが「黒」の切子だ。暗く沈む色調はまるでシーンとした雪景色の街のように静かなる美を内包し、ビビッドとは真逆の性質で切子ファンを魅了する。そんな黒の切子の魅力を究極の引き算で提示したのが山田のゆり氏だ。
②少ないカットで最大限の効果を発揮する
削れば削るほどにカットガラスの美しさを引き出す切子を、あえて削らない。重たい黒色をを残すことで、逆にカットしたポイントを浮かび上がらせる手法だ。
その削りも素直にはしない。黒の末端は、所属するミツワ硝子工芸の先輩であり伝統工芸士の石塚春樹氏から教わったという特殊な道具でカットし、水面のような揺らぎを映し出した。
底の菊紋様は、中心を深く彫り出す「えぐれ」という技法でカットし、輝きの写り込みを呼び込んでいる。手間がかかるため現代ではあまりみられなくなった技なのだとか。
山田のゆり氏の作品の魅力とは?
山田氏は2020年、最年少で伝統工芸士となった技とキャリアの持ち主。近年の江戸切子新作展のテーブルウェアでは、生活に溶け込む切子をテーマに、カラフルな色被せガラスではなく無色透明の透きガラスや黒色を用いる。
③最年少伝統工芸士の躍進!
あえてカットを減らすことで手に届きやすい価格に抑えているのも特徴だ。もちろん、ただ減らすだけでは魅力的な切子にはならない。カットが少ないことがプラスになるように計算し、究極にシンプルな美しさに到達させる。職人歴15年の長きに渡る経験が成せる業だ。
④色の「揺れ」が楽しい
このオールドグラスにお酒を注ぐとどうなるか? ウィスキーや梅酒など色のついたものは、下の透ける部分のみ色が現れ、揺れる波のように映るのがユニーク。また底の菊が浮かび上がって「たゆたう」のも見ものだ。漆黒の美を愛でながら今宵は酔おうか。
山田 のゆり プロフィール
(株)ミツワ硝子工芸所属 切子職人
職人歴15年
2008年 第20回江戸切子新作展 江東区議会議長賞(初出展初受賞)
2009年 第21回江戸切子新作展江東区長賞
2011年 第23回江戸切子新作展 東京都知事賞
2012年 第24回江戸切子新作展 江東区優良賞
2014年 第26回江戸切子新作展 グラスウェアータイムス社奨励賞
2015年 第27回江戸切子新作展 グラスウェアータイムス社奨励賞
2017年 第29回江戸切子新作展 江東区議会議長賞
2018年 第30回江戸切子新作展 グラスウェアータイムス社 奨励賞
2020年 日本の伝統工芸士認定(最年少)
2020年 第32回 江戸切子新作展 江戸切子親善大使坂崎賞
2021年 日本の伝統工芸士会作品展 経済産業大臣賞
アイテム詳細
素材:ソーダ硝子
サイズ(最大直径×高さ):Φ86×96mm