京都にて、着物のデザイナー兼職人だった桑山豊章氏が作り上げた「京都デニム」は、着物の美しさと現代のアイテムの使いやすさをハイブリッドに表現したプロダクトとして評価が高い。どのような取り組みなのか、話をうかがった。
伝統工芸を受け継ぐための
着物の技術を注いだデニム
江戸時代の絵師・宮崎友禅斎に端を発する「友禅染め」を筆頭に、長い歴史を誇る京都の染め。現代もなお職人によってその技が受け継がれ、優美な染物が作られている。が、現代人の着物から離れた生活や、染物の分業化によって廃業していく職人が増えているのもまた事実。そこで京都では着物の染織後継者育成プロジェクトがスタートし、着物に使う染色技術を伝統工芸士、デザイナー、縫製工場らと何年もの研究を重ねてきた。そうして完成した、染物と現代のライフスタイルを掛け合わせたブランドが京友禅で染め上げられる「京都デニム」だ。現代的なシルエットのジーンズの随所に、日本を感じさせる染めのエッセンスを散りばめ、その人気はデニムファンや和ものファンにとどまらない独特な世界観を発揮している。着物の染色技術でジーンズを作るのはなんと世界初の試みだという。
京都から発信する
着物と洋服の新しい関係
「京都デニム」を牽引するのはデザイナーの桑山豊章氏。彼は京都生まれ京都育ち、生粋の京都人だ。大阪芸術大学工芸学科でテキスタイルデザインを学んだ後、京都にて職人とともに着物の染色加工、デザインをはじめる。斬新な意匠の作品を数々生み出して話題を呼ぶようになった後、「着物の職人技術やデザインを世界に広めたい。着物の洋服を作ろう」という想いから、デニム素材との出会いより染色研究を重ね約5年、2008年「京都デニム」を発表。幼少の頃から職人の技術や手仕事に興味を持ちはじめた、手仕事でしか生みだせないモノの味わいや深み、あたたかさを自らの手で表現している。
独特のシルエットへのこだわり
伝統×革新を現代に問う
どのようにテーパードをきかせるか、ジーンズにおいてはそのシルエットを左右する大切なポイントだ。「京都デニム」の「斬-ZAN-」は、やや余裕があるワタリ、膝から急激に細くなる仕様で、細身で脚をきれいに見せる。そして何より、鹿の子素材のTシャツのシルエットは独特だ。「Tシャツの気になっていたポイントを洗い出して解消していった」(桑山氏)と、人の筋肉のつき方や太った場合にどのように体型が変化するかを研究し、胸囲や身幅をゆったりととった。そうすることでおなかがぽっこり出ていても目立ちにくく、体型をカバーしてくれるTシャツに仕上がっている。伝統を守り抜くだけではなく、着る側の視点でアグレッシブに形を変化させるのが、桑山氏のデザインの真骨頂だ。
着心地、履きやすさ抜群
京都だからこそ成しえた和アイテム
エジプト綿で織られた高密度の鹿の子Tシャツは、肌の接地面積が少ないので、汗をかいてもべたつきにくくその着心地は抜群だ。夏はこれ一枚で過ごせるし、表情がある素材なのでジャケットのインナーに使っても面白そう。ベーシックなグレーと涼感のあるスカイブルーは藤巻百貨店の別注で染め上げたものなので、ここでしか手に入らないレアカラーだ。ジーンズはそのシルエットと同様に細身のシャツやジャケットと相性がよさそう。ポケットに手を入れて、染め地や組み紐部分をチラリと見せ、和の印象をアピールしてもいい。「京の文化を身にまとう」。そんな言葉がふさわしいアイテムの登場だ。