パリジェンヌやニューヨーカーも魅了するアーティスティックな薩摩切子
ガラス工芸作家「頌峰(しょうほう)」が描く幻想的な桜のロックグラス
■仏・在マルセイユ日本総領事館の贈答品を創った作家
手に取った瞬間、クリスタルガラスの光の屈折と重厚感、繊細な桜模様と華やかなピンクのグラデーションに心奪われるロックグラス。ガラス工芸作家「頌峰(しょうほう)」が創る薩摩切子は、江戸時代からの歴史を受け継ぎながらも、そのオリジナリティに溢れるデザインで、国内はもとより海外でも高く評価されている。頌峰氏は2013年にフランス・パリでの「8 artistes de Satsuma in Paris 2013 」に作品を出展したのを皮切りに、ニューヨークのジュエリデザイナーとのコラボレーションや、フランス・在マルセイユ日本国総領事館やアフリカ・在モーリシャス日本国大使館の贈答品に作品が起用されるなどワールドワイドに活躍している注目の作家。藤巻百貨店でも満を持しての登場となった。今回は代表作の一つ、「花やか」と名付けられた桜モチーフのオールドロックが初お目見え。アシンメトリの構図に彫られた桜模様と幾何学的なカットの融合がなんともアーティスティックな逸品だ。
■薩摩切子の復元に尽力する中で追求した匠の技と独自の感性
そもそも「薩摩切子」とは、あの篤姫の養父だった島津家28代当主・島津斉彬が江戸時代末期に海外交易品として開発させた切子ガラスのこと。独特のグラデーションや、日本初の紅色ガラスなどが珍重され、篤姫の嫁入りの品にもなったという。しかし斉彬の急逝や幕末の動乱により、わずか20年足らずでその歴史は終焉してしまった。そしてその100年後にあたる1985年、数人の職人たちが一度は幻となった薩摩切子を研究、見事復元したのが、現在まで続く薩摩切子の歴史だ。実はその復元当時の若手職人の一人が頌峰氏。復元に15年携わったのち独立し「ガラス工房 舞硝(ぶしょう)」を立ち上げた。氏は薩摩の伝統を受け継ぎつつも、江戸切子的な表現も巧みに取り入れ独自の作品として昇華。作家「頌峰」にしか生み出せないモダンに進化を遂げた切子を追求し続けたそのキャリアは30年以上に及ぶ。
■グラスに刻まれた唯一無二の美の世界を手にする至福
作品を手にするとしっかりとした重みと限りない透明度に驚くはずだ。海外の高級グラスブランドにも使用される、クリスタルガラスを贅沢に使用しているのだが、このクリスタルをふんだんに使った厚みこそが実は優美な色彩のグラデーションを描く秘密。薩摩切子は透明のガラスの外側に「色被(き)せ」と呼ばれる色ガラスを重ね、その上からカットを施していく。彫る角度や深さを調整することで、色ガラスの部分が薄くなり、透明ガラスの層へと遷移する繊細なグラデーションが現れるのだ。「ぼかし」と呼ばれる薩摩切子独自のこの技を大胆に施したオールドロック「花やか」は、伝統を踏襲しながらも革新的な表現を追及する、まさに頌峰氏ならではのスタイル。側面には古典的な文様である六角籠目。「六角形はハチの巣や雪の結晶など自然界に存在するとても強く美しい形。桜や底面に施した菊文様とも相性がよいと思います」(頌峰氏)。
■桜を愛する日本人ならではの美意識を描いたグラス
日本人がこよなく愛し、国を象徴する花でもある桜をモチーフにした理由を頌峰氏に尋ねた。「はかなさに美を見出す日本人の繊細な心を表現したくて桜を描きました。満開の桜はほんの一瞬しか見られませんが、そのひと時に集中して愛でようという想い、すぐに消えてしまういのちを愛しむ気持ち、そうした日本人なら誰もが持つ繊細な心を桜模様に託しました。出会いと別れの季節である春に咲くというのもニクいですよね」。金を配合して作る金赤の色は満開の桜を思い起こさせると共に、絶妙な艶やかさを演出。酒を注いで手にすると、持つ角度や方向によって、桜が透けるピンクのグラデーションと籠目の幾何学模様が様々な光の表情を見せてくれる。柔らかなニュアンスで美しい日本の心を伝える花切子のグラス。一瞬の季節のうつろいを大事にいとおしむように、このグラスを使って酒を飲む時間そのものに、じっくり向き合って楽しみたい。
ディティール
アイテム詳細
製造国:日本
素材:クリスタルガラス
本体サイズ:口径8.0cm、高さ8.6cm
箱サイズ:横10.9cm×高さ12.8cm×奥行き10.9cm
※木箱入り。作家「頌峰」氏自らが箱書きした共箱に入れてお届けします。
本体重量:320g(化粧箱含め480g)
満水容量:約170cc
※全て職人による手作業で作るため、重さや厚み、色の濃さが一つ一つ微妙に異なります。あらかじめご了承ください。
<使用上のご注意>
※耐熱ガラスではありませんので、熱湯を注ぐと割れます。急熱・急冷には充分注意してください。
※ガラスどうしをぶつけたり、重ねたりしないでください。
※研磨剤入りのスポンジ、金属たわしなどを使用しますと傷が付き、破損の原因になります。
<お手入れについて>
※乾き切らないうちに乾いた布で水気をよく拭き取って下さい。水あかがつきにくくなり末永く光沢が保てます。