加瀬ラタン工芸のラタン家具

銚子の地場産業を背景に、伝統の技で籐製品を作り続けている加瀬ラタン工芸。100%天然素材を手で編み上げる製品は、職人の丁寧な仕事ぶりが物を言う。使う人のことをまず考えるという物づくりの姿勢が、顧客に“もっと早く出会いたかった”と言わせ、心を強くとらえている。

銚子の地場産業を背景に江戸時代からの伝統を受け継ぐ

銚子の地場産業を背景に
江戸時代からの伝統を受け継ぐ

加瀬ラタン工芸が工房を構えている千葉県銚子には、籐を扱う地場産業があった。東南アジアを中心とした熱帯、亜熱帯に生息するヤシ科の植物を、製品化できるように加工する産業として発展し、やがて布団叩きや敷物、雪駄など日用雑貨を製造するようになる。加瀬ラタン工芸の前身もそこから生まれた。家具を手がけるようになったのは、昭和45年頃。現在の社長・加瀬文夫氏が、東京にあった「山川ラタン」で3年ほど修行をして戻ってきたことがきっかけになる。最初は、修業先の下請けをしながら技術を磨き、徐々に自社製品の品目を増やしてきた。東京で身につけた伝統の技と、銚子の地場産業の融合で、今に至っている。

作り手の考え方・態度が籐を長く愛されるものに変える

作り手の考え方・態度が
籐を長く愛されるものに変える

「竹は中が空洞だけど、籐は繊維層の集まり。だから強くてしなやか、しかも軽いんです」(加瀬文夫氏)。切ったり削ったり、好きなように加工して使うのが木の製品だとすると、籐は太さの違うものを、選別し組み合わせてひとつのものを作っていく。「籐は扱いが難しいというより、いかに丁寧に作るかなんです。作り手の考え方、物に対する態度がはっきり現れるから、見る人が見れば、すぐにどういう人が作ったかわかると思いますよ」(同氏)。「籐は長く使うもの」というイメージからすれば、丁寧に作られた製品が欲しいと思うのは当然だ。同社の製品が愛される理由は、そんな職人の仕事ぶりにあるのかもしれない。

弾力のある籐を編み上げ使う人にフィットする製品に

弾力のある籐を編み上げ
使う人にフィットする製品に

加瀬ラタン工芸の主力製品である椅子・スツール類は、まさに籐の特質を活かした、人に優しい家具だ。弾力のある籐を編み上げているので、身体にフィットする。「同じ椅子でも、体重の軽重でしなりかたは違ってきます。時間がたつにつれ、その人の座りやすい形に変わっていくので、そうなったら手放せないでしょう」(同氏)。それが愛着というものなのかもしれない。職人が時間をかけて手で編み上げたものには、その人の思い、優しさがこもる。同社の製品を買ったお客様には、「もっと早く出会いたかった」という声が多いというのも頷ける。決して安い買い物ではない。しかし、だからこそ大事に使おうという気にさせる品々なのである。

使う人が愛着を持つような心の伝わるもの作りを目指して

使う人が愛着を持つような
心の伝わるもの作りを目指して

籐と言えば、家具やバッグを初めとする装飾品がイメージされる。しかし、少し前には家の内装にも籐は使われていたようだ。滑りにくい特質を活かして、階段の手すりに巻かれることも多かったと言う。「人間が手で巻いたものですから、他の素材とは違って、温もりがあるんです」と語る加瀬氏。今後は、そのような古いものの良さを掘り起こしたいという抱負を持ちつつ、後継者育成にも意欲を燃やす。作りたいものをただ作るのではなく、一歩先のこと、その製品を使う人のことを思い浮かべながら作るという同社の製品は、受け取った側には、作り手の思いが伝わる。もはやただの家具、装飾品ではなくなるのである。

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