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シェフ 松嶋啓介(前編)

藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”を語り合う「ゲストインタビュー」。今回のゲストは南仏・ニースや東京・原宿にあるレストラン「KEISUKE MATSUSHIMA」のオーナーシェフの松嶋啓介さん。国内外から注目を集めるフレンチ界の新旗手を魅了するモノとはーー。(前編)
後編はこちら

フランス発・日本産の
デニムをはき続ける矜持

藤巻 松嶋さんが「長く持っているモノ」って何ですか。
松嶋 ジーパンですね。どこに行くのもジーパン。この間、モナコ公国のパーティに招待されたときも、僕一人だけジーパンだった(笑)。
藤巻 いいねえ!
松嶋 A.P.C.(アー・ペー・セー)が大好きで、高校生のときから、ずっとこればかりはいているんです。20歳でフランスを旅行し、そのとき初めて、A.P.C.のデニムが日本製だと知って、ますますはき続けなくちゃと思いました。日本人に生まれながら、フレンチのシェフをしている自分と重なるものを感じたんです。

藤巻 ひとつ自慢してもいい? A.P.Cは1992年に俺がJUNという会社のメンバーと共に伊勢丹に入れたんだよ。
松嶋 そうなんですか。
藤巻 代官山に1号店があったでしょう。
松嶋 僕が初めてジーパンを買ったのは、その代官山の店です。
藤巻 2号店が伊勢丹なんだよ。まさか、ここでA.P.C.の話を聞くとは思わなかったからびっくりした。俺が惚れ込んだブランドの一つ。A.P.C.との出会いがあったからこそ、「解放区」を作った。俺自身の人生のターニングポイントになっているブランドと言ってもいい。
松嶋 A.P.Cをはき続けたい理由がもうひとつあるんですよ。いくつになっても同じサイズをはける自分でいたい。
藤巻 いつぐらいからサイズが変わってないの?
松嶋 少なくとも、この10年は同じサイズです。ちょっとぐらいきつくても着ているうちに伸びますしね。嫁がことあるごとに注文してくれるんですが、ある日ワンサイズ上のものを注文されたら、僕自身に問題がある。痩せなくては……と焦りますね。
藤巻 松嶋さんにとって、デニムの魅力は?
松嶋 何といっても「リラックス」ですね。どのような場に言っても自分らしくいられる。「今日はちゃんとした恰好で来てね」と言われれば、ジーパン以外を着ていくこともあります。でも、とくに何も言われなければ、基本ジーパン。
藤巻 もはや“松嶋スタイル”だね。

シェフが「片付け」を
徹底的に重視する理由

松嶋 今は情報もモノもあふれている時代でしょう。だからこそ、自分のスタイルが求められる。フレンチのシェフも同じ。ただ、流行の店構えにして、流行の食材を並べても仕方がない。重要なのは「お店としてどのようなスタイルを提案していくか」ということなんです。
藤巻 松嶋さんが「スタイル」を意識するようになったのはいつ頃から?
松嶋 20歳のときに、フランス料理の修業をするためにフランスに渡ってからだと思います。向こうではとにかく時間だけはたくさんあったので、三つ星、二つ星レストランのスペシャリテを研究していた。あるレストランのスペシャリテについて書かれた記事やレシピが載っている雑誌を見つけると、さっそく切り抜いてスクラップし、ノートに書き写して頭に叩き込んだ。

松嶋 そして、料理のデッサンをしながら、そのシェフのスタイルを分析していました。
藤巻 面白いね。そんなことしていたの。

松嶋 そうなんです(笑)。繰り返しやっていくうちに、何となくそのシェフのスタイルがわかるようになってくるんです。あれこれ見ていくと、若いうちからスタイルを意識し、自分のスタイルを確立した人ほど伸びていることもわかってくる。
藤巻 一過性の流行で終わらない、風化しないブランドやレストランには必ず理由があるんだよね。
松嶋 若いシェフやうちのスタッフにも「まずは自分のスタイルを確立するのが先だから」という話をよくしています。
藤巻 スタイルを作り上げる上で大切なものって何だと思いますか。
松嶋 とにかく「片づけること」ですね。逆に言えば、僕はそれぐらいしか言わない。きれいに片付いていれば、仕事もスムーズに進むし、仕事に対して“よい姿勢”で望むことになる。整理整頓され、「型」がついてくると、自分が進むべき方向性も見えてくる。
藤巻 あの素晴らしく旨い「レストラン アイ」 の料理の背景には徹底した片付けがある。「基本」ってそういうことなんだよね。これって、すべての仕事に共通するんじゃないかな。
松嶋 最初に「型」を身につけてしまえば、あとは放っておいても伸びる。だからこそ、後進を育てる立場にいる人間はまず、「型」を徹底的に叩き込む必要があるんだと思います。

シェフの仕事を支える、
意外な三種の神器

藤巻 「こだわりの仕事道具」はどうですか? やっぱり、調理道具になるのかな。
松嶋 携帯電話、名刺、手帳ですね。
藤巻 おお! 意外なアイテムが出て来ましたね。お気に入りの手帳メーカーがあったりするの?
松嶋 ファイロファックスのバイブルサイズで、中身だけ毎年買い換えています。(手帳を見せながら)こんなところに格好つけても仕方がないので、実用重視です。
藤巻 ははははは。使い込んでいるね。これがホントのプロなんだよね。手帳は仕事道具であって、ファッション小物ではない。

松嶋 毎年中身は入れ替えるけれど、1~2年分のカレンダーは残しておいて、「この時期、こんなことがあった」ということを思い出すヒントにします。
藤巻 俺も伊勢丹時代はバイブルサイズのシステム手帳を使っていたよ。懐かしいなあ。
松嶋 忘れてはいけないものはしまっておく場所でもあります。いただいた手紙や招待状とか。ほら、これはMOF(最高職人勲章)の技術試験の案内状ですね。

藤巻 すごい! 日本人でMOFもらった人なんてほとんどいないでしょう?
松嶋 いないですね。
藤巻 いいなあ、仕事している人の手帳だ。
松嶋 グサっときた言葉をメモしているページもあります。例えば、「男が人の上に立って成功するには方法はたった一つしかないぞ。それは過去誰もやったことがないことを一生懸命やるだけだ」(力道山)。書いておかないと、忘れてしまうので(笑)。
藤巻 俺も今は手帳は持たなくなったけれど、出会った素敵な言葉を書き留めるメモ帳は持ち歩いている。話をしていて思ったけれど、松嶋さんはシェフであると同時に哲学家でもあるよね。
松嶋 フランス料理のシェフはみんな哲学家なんですよ。自分たちの哲学をどう店に落としこむかが勝負。僕は日本人のくせにフランス人シェフ以上に理屈っぽいと、フランス人に笑われますけど(笑)

■後編『日仏の往復生活を送る松嶋シェフを支えるあのアイテムとは?
月1回ペースで日仏を行き来する理由とその必需品とは??。

松嶋啓介
まつしまけいすけ●シェフ。1977年福岡県生まれ。エコール辻東京料理専門学校卒業。渋谷「ヴァンセーヌ」を経て20歳で渡仏。フランス各地で就業を重ねたのち、2002年、25歳の時にフランス・ニースにてレストラン「Kei's Passion」をオープン。南仏の素材を生かした斬新な料理が評判を呼び、2006年に28歳で外国人シェフとしては最年少でのミシュランの星獲得を果たす。同年、店名を「KEISUKE MATSUSHIMA」に改め、拡大オープン。以来、2012年まで7年連続星を維持する。2009年には、神宮前に「レストラン アイ(2014年 KEISUKE MATSUSHIMA に変更)」をオープン。「地産地消、旬産旬消」をキーワードに、関東を中心に生産された旬の食材の味を最大に引き出す。日本版ミシュランでも1ツ星を獲得。

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