東京下町にある小さな飴細工の店「あめ細工吉原」。伝統を継承しつつもデザインや味にこだわり、自由な発想で作られる飴細工は、国内のみならず世界でも高い評価を受けている。目で、そして舌でも楽しめるこんなギフトなら、きっとあの人の笑顔を見られるはずだ。
世界からラブコールを受ける
懐かしくも新しい飴細工の専門店
糸切り鋏のチョキンチョキンという音と、指先の美しい所作に見とれていると、あっという間に白い塊が動物の形になる。飴が冷えて固まるまでのたった3分に、技が冴えわたる。“谷根千”と呼ばれる東京の下町にある「あめ細工吉原」は、世界初の飴細工専門店だ。作る飴細工の種類は80以上。切り出し飴から、立体の似顔絵飴まで、実に幅広い。店主の吉原氏は、イタリアンの調理師という異色の経歴の持ち主。26歳の頃に料理の勉強にと旅立った海外で世界中の人々との触れ合い、故郷である日本のものを作りたいという思いに駆られた。帰国して選んだのが、実は子供のころからの夢であった飴細工の道。師匠のもとで修行し、独立後はお祭りやイベントを回り研鑽を積んだという。そして、2008年に飴細工の専門店をオープンさせるやいなやテレビや雑誌などで注目され、今では海外でも高い評価を受ける。
実演でなくても感動させる質の高さ
「持ち帰っても喜ばれる」飴細工
飴細工の一番の魅力は、なんといっても目の前でできあがる即興の楽しさ。飴を練り、丸めて鋏を入れ、伸ばす。この少ない動作だけで、白い飴玉に命が吹き込まれる。しかし、実店舗では商品をいつでも用意しておく必要があり、すべてを実演で作るのは難しい。だからこそ「持って帰った後も嬉しいと思ってもらえるものを作りたい」と、吉原氏は他の飴細工にはない“クオリティ”を求めてきた。飴が冷え固まるまでの時間は短く、やり直しがきかない。そのため、作るもののイメージに迷いがなく、その通りに作ることができる技術が必要だ。日々鍛錬を重ね、「見るのが勉強」と動物園や美術館に通いつめてできた飴細工の動物たちは、今にも動き出しそうだ。海外では“作品”としてサインを求められるほどの質の高さは、どんなシーンでも受け取った人に感動を与えたいという職人魂の所以なのだ。
伝統を継承していくと共に
進化していくための飴作り
箱から飴を手に取る瞬間、穏やかだった吉原氏の顔が一瞬職人の顔に戻る。このとき、飴の温度は約80度。熱い飴を練り上げていくうちに空気の層ができ、白く輝きを放つ。ヨーロッパにも飾りとしての飴細工はあるが、即興で作り、その形を愛で、さらに食べられるという日本の飴細工は世界でも珍しい。しかも、独自に飴をブレンドする職人は日本でも例がないという。西洋の製菓技法を取り入れ、味や香りにまでこだわるのは、吉原氏が調理人であった経歴ゆえだろう。「飴細工を多くの人に知ってもらい、継承していきたい。でも、こだわりすぎては発展もありません。進化することが大切です」と吉原氏は語る。弟子を育てることや海外での活動に注力するのは、伝統を継承すると共に新しい感性に触れる機会であると、“飴細工の域を超えた飴細工”を作りだすために余念がない。
「愛でる」、そして「食す」
わくわくする楽しさをギフトに
何かのお礼やプレゼントに、さりげなく、でも少し気の利いたものを贈りたい。そんな時は、この「あめ細工吉原」の飴細工をぜひリストに入れてほしい。飴細工を贈るという思いがけないプレゼントに、昔からなじみのある年配の方には懐かしく、若い世代には新鮮さを感じ、話が弾むはずだ。おしゃれな箱に入った飴細工は色鮮やかで愛らしく、精巧ながらもひとつひとつ表情が違う手作りのぬくもりが感じられる。愛でた後は、ほんのり甘いバニラの香りに癒されながらおいしくいただけるのも嬉しい。「見て、食す」。一度で二度おいしい贈る物ができるのは「あめ細工吉原」ならでは。飴細工ができていくのを目の前で見るような、ワクワクした気持ちを感じてもらいたい。そんな、「もてなしの心」が込められたギフトなら、大切なあの人をきっと笑顔にしてくれるはずだ。