常に新しいデザインを追求し、今までにないパターンやカット技術を用い、江戸切子として和風な中にも現代的なデザインを取り入れた作品を提案し続ける但野硝子加工所。常設販売をしない但野英芳氏の江戸切子が藤巻百貨店1周年を記念して初登場する。
多彩なデザイン、表情を持つ
“琥珀色”のロックグラス
有名百貨店の催事など対面での販売をメインとする東京江東区に工房を構える但野硝子加工所の江戸切子。現代的なデザインを取り入れた作品群の美しさに藤巻本人も一目ぼれをしたと話すのが江戸切子のグラスだ。今回、数ある作品の中から波をイメージして作られた「波濤文」のロックグラスが藤巻百貨店に登場する。江戸切子では非常に珍しいシンメトリーではないデザインが新鮮かつ強烈な印象を残す。アンバー色のクリスタルに繊細な菊つなぎが彫ってあり、覗き込むと内側にも立体感があり万華鏡のよう。様々な表情の変化を楽しめるグラスだ。
建築設計出身の作家・
但野英芳氏が描く江戸切子
1日に平均2個のグラスを作り続けている江戸切子作家・但野英芳氏が作品への想いを語ってくれた。「父親が江戸切子作家で、幼少時代から江戸切子は近い存在でしたが、実は全く興味がありませんでした。私は建築系の専門学校に通い、設計事務所に就職。建築物のデザインをひく毎日でした。この頃、父がコンクール用に作成した江戸切子のクリエイティブさに感動したんです。ふたつとないモノ作りのよさを知り、会社を辞めて父のもとへ弟子入りしました。父は伝統的な柄の切子がメインでしたが、私は1から10まで自分で考えたデザインの切子を作ろうと決めたんです」
繊細に切り出された亀甲、
籠目の文様
但野氏が設計事務所で培ったデザインへのこだわりは江戸切子の作品にも色濃く反映されている。今回紹介する「波濤文」は、防波堤に当たった波が砕けた様をイメージしたもの。おめでたい文様の代表格「亀甲」と、編み目のひとつを紋章化した正三角形を上下に重ねた「籠目」の柄を全面にあしらう。すべての彫刻が切り出しというから、作業の細かさを実感せずにはいられない。「グラスの切り出しよりもデザイン案を考えるほうがより時間がかかりますね」。(但野氏)職人の技とデザイン性、アイデアが凝縮された逸品。表面には立体感があり、持った時の重厚感は格別だ。
粋な大人の贅沢な逸品で楽しむ
至福の時間
「このグラスで焼酎のロックを楽しんでほしいです。焼酎と氷を注ぐと、グラスの新たな表情が楽しめます。さらに氷を入れても寒々しい印象にならないので、オールシーズンで使ってほしいですね」。(但野氏)自分へのご褒美に、贅沢なひとときのお供に最高のアイテムだ。江戸切子は1834年、江戸大伝馬町のびいとろ屋、加賀屋久兵衛が金剛砂を用いてガラスの表面に彫刻することを工夫したのが今日に伝わる江戸切子のはじまりだ。明治時代に入ってヨーロッパのカットグラス技法が導入され、現代に伝わる江戸切子となり、現在、日本の伝統的工芸品に指定されている。
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