グラスとビールの“相性診断”鼎談

藤巻百貨店が満を持してご紹介する「松徳硝子ビールグラスコレクション」。 松徳硝子とともに型からおこして制作した「クラフト / ブラック」や、松徳硝子の定番「うすはりグラス」など、 ビールとグラスの相性を“マジメに”考えた個性豊かなオリジナルグラスセットです。
今回は、藤巻幸大と齊藤(松徳硝子)が松徳硝子の職人たちと作り上げた自信作を手に、「常陸野ネストビール」へ。 プロデューサー、モノづくり、ビール、三者のプロが終結した座談会。グラスの力で“よりうまく”“より楽しく”ビールを味わいながら、 思う存分語り合ってきました。商品にまつわるストーリーはこちら

鼎談のメンバー

  • 藤巻幸大
    いわずもがなの藤巻百貨店プロデューサー。ジャンルを問わず「本物」を見出す目利き力を持つ。「本物」に出会うと少年のように目を輝かせる癖あり。
  • 齊藤能史
    松徳硝子(株)の取締役/クリエイティブディレクター。広告制作会社、メーカーを経て現職。同社の商品企画からデザイン、経営企画までを手掛ける。グラスをデザインしては、酒を飲む日々。
  • 木内敏之
    「常陸野ネストビール」を手掛ける木内酒造の取締役。“こだわり”、“本物”、“カッコよさ”が経営の信条。

藤巻幸大(以下、藤巻) 木内さん、今日はね、おもしろい商品を持ってきたんですよ。このグラスセットなんですけど…(グラスを取り出して)「ビールの味わいを変えるグラス」です!
木内敏之(以下、木内) へぇ、おもしろいですね!やっぱり、グラスが変わると、味も変わりますし、泡立ちも香りも異なりますもんね。
齊藤能史(以下、齊藤) そうなんですよ。大人の自由研究みたいに、いろいろなグラスでビールを飲み比べたくて。「それなら木内酒造に行こう!」と藤巻さんにご提案いただいて、今日は藤巻さんとともにお邪魔しました。

木内 それは光栄ですね。せっかくなのでいろいろなビールをご用意しておきました。
藤巻 ありがとうございます!グラス作りのプロである松徳硝子さんと、ビール作りのプロである木内酒造さん、そして手前味噌だけど目利きのプロとしての僕。“プロの集まり”として、今日はとことん飲み比べましょう!

齊藤 あ、ちょっと待ってください。乾杯の前に藤巻さんにひとつ聞きたいことがあるんですよ。ここまで二人三脚で散々一緒にグラス作りをしてきて今更ですし、この場で聞くのもどうかと思うんですが……、実は最近、「藤巻さんがビール党じゃない」という情報をキャッチしたんですが(笑)、ホントなんですか!?
藤巻 えっ!?そんなことないよ。そんな話になってるの?
齊藤 はい、たしかな筋の情報です。
藤巻 それは完全に誤解だよ(笑)。あのね、ビールそのものが苦手というわけじゃなくて、「とりあえずビール!」っていう習慣が嫌いなの。僕の生き方には「とりあえず」なんてないわけ。そんな中途半端な生き方はしてないからさ。
木内齊藤 わかるわかる!それじゃビールに失礼!心を込めてオーダーが基本ですよ。
藤巻 というわけで今回は1本ずつ心を込めて注ぎましょう!

齊藤 では、まずは「料亭ビアグラス」からいきましょうか。花街で芸者さんがお酌するビールをダンナ衆がクイっと飲み干す。そんな下町の“粋”のひとつとして長年愛されてきたのが、このグラスなんです。
藤巻 “おっとっとっと”なんて言いながら飲むんだよね。楽しいなぁ!
木内 どれくらいの期間作っているの?
齊藤 半世紀以上になりますね。
藤巻 半世紀ってすごいね。会社の母体を支え続けたグラスなんだね。
木内 じゃあこのグラスにはうちの代表商品でもある「ホワイトエール」を注いでみましょうか。このビールは、コリアンダーやオレンジピール等のスパイスを加えて作るベルギーの伝統的なビールです。
藤巻 木内酒造がビールづくりを始めるなり、世界的なビールコンテストで優勝してしまったというビールですよね。
齊藤 いきなり優勝というのも凄いですよね。決め手は何だったのでしょう?
木内 ベルギービールではあるけれど、“日本らしさ”も追求したというあたりがユニークだと受け止められたようです。
藤巻 なるほど。単なる模倣ではないということですね。

全員 では、乾杯!
藤巻 (「料亭ビアグラス」に注いだビールを一口飲みながら)最高!素晴らしいですね。いくらでも飲めてしまいそうだな。旨い!
齊藤 最初のひと口を楽しむのにふさわしいグラスです。
藤巻 木内さんだったら、ホワイトエールはどのグラスで飲みますか?
木内 「料亭ビアグラス」もいいけれど、「チムニー」はどうかな。
藤巻 このグラスは泡持ちがいいんだよね。しばらく置いてあっても、きれいに泡が残ってる。
齊藤 “煙突”という名前の通り、ごく細身で口径が狭いため、ガス抜けが少ないんですよ!
木内 これは軽い口当たりのビールを飲むのにぴったりだね。

齊藤 キリっとしたのど越しをストレートに味わいたいというときにもぜひおすすめしたいです。風呂上がりの1杯には最高ですよ。あとは、定番ですが「ビアコップ」もいいですよ。よく中華料理屋さんで瓶ビールとともに出される形ですが、職人の手仕事によるキリッとした飲み口が自慢です。
藤巻 口部の仕上げが繊細で、量産品には出せない美しさがあるんだよね。キュッと飲むのにも、ちびちび飲むのにもいい。

木内 次は、まったくタイプの違うビールで試してみましょう。
藤巻 今日の取材は楽しいな。インタビューという名の宴会でしょう。
齊藤 いやいや、あくまで“マジメに”ビールとグラスの相性を伝えるための座談会ですよ(笑)

藤巻 次はどんなビールなんですか。
木内 「アンバーエール」という、赤みを帯びた銅褐色のビールです。
藤巻 これは……! コクがありますね。さっきのホワイトエールの爽快感とはまた違う。
齊藤 甘みも苦みもしっかりしている。この重厚感に合うグラスと言えば、やはり、「クラフト/ブラック」でしょうか。
木内 定番中の定番ですよね。
藤巻 色のイメージからすると、もっと黒ビールのように重たくて、つまみもほとんどいらないという味わいを想像していたけれど、全然違いますね。魚介類と合わせたい。
木内 さすがですね。鮨もよく合いますよ。
藤巻 それは面白い!

木内 「クラフト/ブラック」は鉄板だけれど、「バルーン」もいいですね。
齊藤 丸みを帯びた形状で、液面と鼻の距離が近くなるので、香りをとことん楽しみたいときに大活躍します。
藤巻 ホントだ、「バルーン」で飲むと香りがすごいね。
木内 このグラスはテイスティング用としても最高ですね。ビールの特徴を徹底的に引き出してくれる。
齊藤 おっしゃるとおりです。「うすはりタンブラーL」と「バルーン」で飲み比べてみると、バルーンで飲んだときのほうが、「アンバーエール」のグッとスパイシーな香りが立ちますよ。
木内 ほんとだ。最初に「バルーン」で飲んだときにね、藤巻さんのオーデコロンの香りかなと思ったんですよ。でも、違う。これは、アンバーエールに使っているホップの香り。
齊藤 「酒の香りがしっかりこもるように」というコンセプトのグラスですからね。プロの方にも実感していただけて、企画段階から藤巻さんや職人と一丸になってがんばってきた努力が報われます。
木内 松徳さんって薄いグラスのイメージだったから新鮮だね。
齊藤 でしょ!?うちとしても挑戦だったんです、実は。「うすはり」はもちろんうちの“看板娘”ではあるけれど、それだけじゃないところを伝えたくて、今回、藤巻百貨店さんとともに厚い「クラフト/ブラック」を作りました。
藤巻 今回のセットの“肝”になるグラスだね。金型からつくってもらって、職人さんと一丸となって試作を重ねたからね。
齊藤 ですね。今回「2個セット」も販売するんですが、それはこの「クラフト/ブラック」にしました。自信を持ってオススメするグラスですね。

藤巻 (木内さんが注ぐビールを見て)あれ?そのビールって…
木内 はい、藤巻百貨店でも取り扱っていただいている「ニッポニア」です。日本で最初にできたビールを復刻したビールで、120年前の麦を15粒から復活栽培し、日本古来のホップを使用して作っています。
齊藤 聞いているだけでワクワクしますね。よし、飲みましょう!
藤巻 (グラスに注ぐ様子を見て)素晴らしく美しい。黄金色に輝いていますよ。
木内 これは日本のビールの原型とも言えます。僕は「うすはりタンブラーL」が一番合うんじゃないかと思うんですよ。
齊藤 ありがとうございます。飲む前から“名コンビ”になる予感大ですね!

藤巻 さっそく、試してみましょう………うまい!! これは素晴らしいですよ。
齊藤 うれしいです。僕も酒好きなので、テンションあがります(笑)
藤巻 このビールはぜひ和食と合わせたいね。
木内 和食は何でも合いますが、とくに焼き魚は最高ですよ。
藤巻 ホント素晴らしいです。目のごく細かいカシミアのマフラーをしているような気分。
齊藤 カシミアにたとえるなんてさすが藤巻さんですね。
藤巻 いやいや(笑)

齊藤 「うすはりタンブラーL」は、松徳硝子の看板商品のひとつで、究極の引き算の末に生まれたグラスです。できる限り薄くしてその姿かたちを極限まで消し去ることで、ビールのうまさを引き立てるんです。
木内 麦の味わいをしっかり感じてほしい「ニッポニア」にぴったりのグラスだね。もしかして、さっきのアンバーエールとよく合っていた「バルーン」で飲んでも面白いかもしれないなぁ。
齊藤 はい、試してみましょう!……あれ?
藤巻 ちょっと香りがこもりすぎますね。さっきと全然違う。
木内 「ニッポニア」の繊細な味わいを存分に楽しむにはヨーロピアンスタイルではなく、日本のグラス。繊細な「うすはりグラス」が一番合うというわけですね。
齊藤 なるほど!そこには気付かなかったなぁ!やっぱりビールを知り尽くしている方は、楽しみ方もわかっていらっしゃいますね。

齊藤 今日はビールが身近な飲み物であると同時に、もっともっと奥が深い飲み物でもあると改めて感じました。
藤巻 実は、今回、この企画を考えることになったきっかけのひとつが、かつて伊勢丹でのバイヤー時代にベルギービールの仕入れルートを確保するため、飛んだことなんだよね。
齊藤 最初にビール党じゃないなんて言いましたが、むしろ、かなりのビール好きだったんですね(笑)
藤巻 現地で食べた、ムール貝とビールの組み合わせが忘れられなくてね。もし、似たようなビールとつまみを出してくれる店があったら、ぜひ行きたいけれど、なかなかないんです。木内酒造さんのビールのようなこだわりの逸品がもっと、いろいろなところで飲めるようになってほしいですね。

木内 グラスも重要だよね。その日の気分で選んでもいいし、飲み物の魅力を最大限に引き出すグラスもある。今日の座談会のおかげで、うちのビールの新しい味わいも発見できたよ。
藤巻 どのグラスを選ぶかというだけで、味わいがまったく違う。こうした違いを発見して楽しんでもらうことこそが、今回のグラスセットのいちばんの目的。「グラス選びにこんなにも繊細で多様な楽しみがあったなんて!」って思ってもらえたら最高!
齊藤 お酒に限った話ではありませんが、「味」は決して、舌だけで味わっているわけではないんです。目をつむったり鼻をつまんで食べると味がわからなくなることがあるように、五感全体で味わっています。だから、飲むグラスの造形や、口当たりやサイズ感、重さによっても、印象が変わります。

木内 そもそもビールは開けて、グラスに注ぐことを前提につくられています。つまり、缶のプルトップをあけただけで、グラスに注がない状態で飲むのは、不完全なまま流し込んでいるというわけです。お酒をおいしく飲むには、やはりグラスにも気を配りたい。
齊藤 僕たちは職人の手仕事にこだわって、日々真剣にグラス作りに励んでいます。でも、小難しいことは極力言いたくないとも思うんです。このセットもビール専用ではなくて、ワインを入れても日本酒を入れても構いませんし、どんな飲み方もアリ。飲んだ人が「これはうまい!」と感じていただければオールオッケーです。今日のように、あれこれ試しながら、五感をフル回転させて、自分好みの組み合わせを探していくのが楽しいじゃないですか!
藤巻 ホームパーティなんかで出せば、きっと十人十色の“うまい!組み合わせ”が生まれるはず。ぜひ友達と飲み比べたり、夫婦や恋人同士でいろいろなグラスを試してもらいたいね。

(了)

【藤巻百貨店限定】 松徳硝子ビールグラスコレクション「麦酒盃六種揃」 セット内容

  • クラフト/ブラック
    クラフトビール、黒ビールなど、重厚で深みのあるビールに最適な厚さと重量が特徴のグラスです。また、口径を広く設計することで、ひと口毎に、ビールが口全体に広がり、ビール本来の旨みをじっくりと堪能することが出来ます。
    サイズ:φ77mm H125mm 約330cc
  • バルーン
    丸みをおびた形状により、グラス内に香りがこもりやすく、飲む時に液面と鼻との距離が近くなることで、ビールの芳醇な香りを堪能出来ます。また、口元へゆっくりと注がれる為、アルコール度数の高いビールにもおすすめです。
    サイズ:φ56mm H97mm 約385cc
  • うすはり タンブラーL
    ビールCMをはじめ、名高い料亭、バー等で広くご愛用頂いている定番ビールグラス。職人の手仕事による繊細な飲み口により、グラスとしての異物感を極限まで消し去ることで、ビール本来のウマさを最大まで引き出すグラスです。
    サイズ:φ70mm H135mm 約375cc
  • チムニー
    煙突という名の細身なグラスは、口径が狭く、泡もちが良く、ガス抜けが少ないのが特徴です。その形状から、ビールのキリッとしたのど越しをストレートに味わうことが出来ます。ドライ系の淡麗なビールにおすすめです。
    サイズ:φ49mm H135mm 約220cc
  • ビアコップ
    瓶ビール用グラスとして愛されてきたあのコップをモデルに、ガラス職人が手作りで吹き上げました。肌ツヤの良さに加え、口部の仕上げまで手仕事で丁寧に行うことで、機械では出せないキリッとした飲み口が特徴です。
    サイズ:φ59mm H97mm 約180cc
  • 料亭ビアグラス
    花街で、芸者さんがお酌するビールを旦那衆がくぃっと一口で飲み干すのが下町の粋と言われ、長年愛されてきたグラスです。一口(ひとくち)ビールグラスとも呼ばれ、松徳硝子が半世紀以上も作り続けてきた逸品です。
    サイズ:φ55mm H97mm 約130cc

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