【鍋谷グラス工芸社】プラネットロック

■あの衝撃よ、再び！「男のロック」を超える新作を独占入手
繊細で儚げな、江戸切子のイメージ。それを脳天直下のごときインパクトでひっくり返してくれた一つのグラスがある。2018年に登場した鍋谷淳一氏の「男のロック」だ。厚く、重く、ゴツく、どこまでもニッチを貫いたその姿は、「メカ」っぽい様相も相まって世の男たちの心の芯をガツンと捉えた。入荷しては即完売を繰り返すという驚異的な売れ方で、江戸切子界に衝撃を与えたまさに名作である。さてあれから2年、我々は鍋谷氏の工房でまたも運命的な出会いを果たすことになる。ギラギラとした輝きと分厚いガラス、ずっしりとした量感……そこには、「男のロック」の系譜を継ぎつつ、氏の世界観をさらに掘り下げた新作「プラネットロック」が鎮座していたのだ。ガラス生地から特注で仕立てたという本品は、正真正銘の超希少品。我々は無理を承知で鍋谷氏に直談判。藤巻創業8周年を記念した、超がつく逸品としてお届けが叶った。他ではまず入手困難な鍋谷氏の新作切子、これは迷っている暇はない！

■江戸切子らしく、かつ斬新に。伝統工芸士・鍋谷淳一の挑戦
鍋谷グラス工芸社は、東京都大田区で三代目続く1949年創業の江戸切子工房だ。現在代表を務めるのが、数々のコンクールや新作展で輝かしい受賞歴を誇る伝統工芸士の鍋谷淳一氏。宮内庁御用品ブランドとしても知られる日本屈指のクリスタルガラスメーカー「カガミクリスタル」の生地を扱うことを許された数少ない職人の一人でもある。鍋谷氏の持ち味と言えば、「男のロック」に代表されるような量感・物体感のある作品だ。「ガラスって繊細で煌びやかなので、どうしても女性が好むイメージがある。それなら、男性が好きそうな“ゴツい”江戸切子はどうかと考えたのがきっかけです」と同氏。薩摩切子も厚みのあるガラスを使うが、最大の違いは色ガラスの被せ方。とにかく薄く被せるのがこだわりで、カットを入れた時の線のシャープさや煌めき方はまさしく江戸切子のそれ。新たなカタチを模索しつつも、江戸切子の持ち味は殺さない、そんな卓越したセンスと技術は各方面から高い注目を集めている。

■ガラスもカットも規格外！極厚ガラスに惑星を閉じ込めて……
ツウならまず目を留めるのが、左右に異なる色を配した世にも珍しい二色被せガラスだろう。これは、「プラネットロック」のためだけにカガミクリスタルに特注したもので「とにかく肉を厚く吹いてもらいました。宇宙をイメージして半分には墨色を、半分にはカガミクリスタルならではの淡い色合いのガラスを被せています」と同氏。通常の江戸切子の2～3倍はあろうかという特厚の生地には、惑星のような玉のカットが散りばめられている。何よりご覧いただきたいのがその深さだ。「通常、玉のカットは蒲鉾型のダイヤモンドホイールを使いますが、本作は球状のホイールでとにかく深く彫っています。少しでも生地の厚みを見誤ると穴が開いてしまうので、大胆に見えて繊細な技術です」と同氏。抉り取るように削られたカットはほぼ“半球体”。玉の切子を施した切子作品は数あれど、ここまで深いものとなると前代未聞だ。二色の間には伝統紋様の菊繋ぎが銀河のごとく横たわり、重厚な世界に一筋の清涼感をもたらしている。

■ロックグラスとは情緒である。五感を震わす至高の酒器
そこに玉の切子があれば、覗き込みたくなるのが人間のサガというもの。通常の玉切子は対面の1／3ほどしか映らないが、本品はその玉の中に対面のカットを丸ごとギュッと映し込む。近いのに遠いような無数の玉模様は、宇宙に瞬く星々を眺めているかのよう。対になった2色の色ガラスがここで出会うのも粋だ。「お酒の色も楽しんでもらえるよう、玉の加工をできるだけ大きくしています」と鍋谷氏。日本酒や焼酎はもちろん、ウイスキーを注いだ姿もぜひ堪能してもらいたい。指が入ってしまいそうなくらい深いカットは、ガシッと掴んだ時のフィット感もたまらない。さらにグラスを傾ければ、酒との対話に句読点を差し込むかのごとく、クリスタルガラスが極上の氷の音を奏でてくれる。見て、触れて、持ち上げて、傾けて……自分と酒との時間をより一層豊かにしてくれる、ロックグラスという存在。「これは！」と思える逸品に出会えることは、いい酒と出会うのと同じくらい幸せなことだ。「プラネットロック」はまさにそんな酒好き達の心をくすぐり、満たしてくれる逸品と言えるだろう。