【m＋】GAGLIARDO

■圧巻の風格。m+渾身の一作、GAGLIARDO
その鞄は、置いてあるだけでまるでそこだけライトが当たっているかのように浮かび上がって見えるほど、圧倒的な存在感を放っていた。藤巻百貨店の4周年を記念するアイテムとして、村上雄一郎氏による「m+（エムピウ）」から届いたのは、そんな感想が漏れるほどホンモノの風格を備えているレザーバッグ「GAGLIARDO（ガリアルド）」。イタリア語で「力強い、たくましい」という意味の名のとおり、オールレザー外装や2本の真鍮のバーで口を閉じるスタイルがクラシックかつ重厚な雰囲気を醸し出す。村上氏がかつて生産していたモデルを今回、「この人ならば」と墨田区のバッグメーカー「HIS-FACTORY（ヒズファクトリー）」の中野克彦氏に製作を依頼。細部を非常に頑強に作り上げ、かっこよくて長く使えるコラボバッグに結実した！

■隅田川をまたいだコラボ「東京ロマンち」
元建築士の経歴を持つ村上氏が手がけ、「millefoglie」や「cent2」など自由なデザインとユニークな構造美のレザーアイテムで知られるブランド「m+（エムピウ）」。蔵前に拠点を構えるm+が吾妻橋に程近いHIS-FACTORYの中野氏とコラボするきっかけとなったのは、隅田川を挟んでそれぞれ両岸に位置する、台東区と墨田区の職人の合同で取り組む「東京ロマンち」というプロジェクト。そのコンセプトに掲げるのは「妥協せずにきちんと作る」ということ。「量産のものっていうのは、どんどん手を抜く方向に行っている気がしていて。例えば料理だったら、ちゃんと出汁を取って出す。それが普通でしょということを我々職人もやりたいと思って始まったんです」（村上氏）。今回の「GAGLIARDO」は「東京ロマンち」の第一弾として発表するアイテム。中野氏の妥協のない鞄作りへのこだわりには、さしもの村上氏も舌を巻くほどだったという。構想1年を経て、2人の凄まじいほどの熱量で生まれたバッグなのだ。

■驚異的なこだわりを発揮する、中野氏のプライド
中野氏に作りのポイントをうかがった。「このサイズのバッグは、細部を作り込まないと絶対に壊れるってわかっているんです。壊れないこと、壊れても修理可能なものを目指しました」（中野氏）。特にハンドルの手の込みようはすごい。芯は床革を積んで肉盛りし、銀面同士を表にして縫い合わせる。コバは丁寧に面取りした後、塗料などは塗らずに磨きをかけてフィニッシュ。この部分だけでもかなりの時間をかけて、ちょっとやそっとではヘタらない・壊れない仕様にしたという。中野氏が好むという太い番手の糸を使って、ガッチリとした重厚感が印象的だ。「重厚さと長持ちを両方生かすように手をかけています。ここまでやらないと気が済まない性分なので（笑）」（中野氏）。どうやら村上氏のオーダーが、中野氏の職人魂に火をつけたようだ。

■エイジングもその機能も。鞄マニアも満足させる圧巻の出来映え
素材は、ボディ部分にあえて表面を摺って独特の表情に仕立てたレザー「プエブロ」と、ハンドル他パーツ部分には発色の良さと堅牢さのある「ブッテーロ」を使用。「経年変化イメージ」をご覧いただくとお分かりになるように、使い込んだ後にはダイナミックな風合いの変化が楽しめる。胴体とマチの隙間にはジャケットやストール、雑誌などが挟める。前部分にはポケットが隠れており、携帯やパスケースなど、すぐに取り出したいものが入れておける。収納部は袋状になっているので、書類などを入れると薄く、かさばるものを入れるとふくらむという便利な仕様など、実は機能性にも優れていて使いやすいのだ。オールレザーだからスーツにしか合わないのでは？ という心配は無用。もちろんスーツにもばっちりだが、手持ち、肩掛け、ショルダーと3wayで使え、意外とカジュアルなスタイルにも合わせやすい。二人のレザーの達人が生んだ渾身の一作は、バッグ好きや革好きの心を満たす魅惑的な1点となった。