ガラスの街で生まれた新たなブランド「小樽切子」
「琥珀×黒」は知る人ぞ知る超希少クリスタルガラス!
■北の大地の新たな表現「小樽切子」が登場!
ガラスの街・小樽で新たな切子が胎動しているのをご存知だろうか。2015年から展開している「小樽切子」は、小樽発の切子表現を創りだそうという気概で「深川硝子工芸」から生まれた。多くの江戸切子の職人に生地供給を行っている同社だが、ガラスメーカーの域から一歩踏み出し、自分たちでも芸術的なカットを施すべく活動の幅を広げている。小樽切子の特徴のひとつは、二色被せのクリスタルガラスを多用すること。多くは一色のみのガラスを削って文様を施していき、色を残した部分との対比のデザインを作るのだが、小樽切子の場合はそこにもう一色が加わることでさらに深い表現が可能になる。特に、「アンバーカラー×色ガラス」の組み合わせは深川硝子ならではの生地。第一弾として登場する小樽切子をご紹介していこう。
■東京から小樽へ。老舗の進化は止まらない
北海道・小樽のガラスメーカーである「深川硝子工芸」は、1906年(明治39年)に東京の深川で創業した老舗。その当時、現在の江東区や墨田区あたりにはたくさんのガラス工場があり、ガラス産業の中心地として名を馳せていた。いまではその数こそ減少したものの、多くの江戸切子工房が居を構え、歴史の名残をとどめている。そんな中、深川硝子工芸は2003年に小樽に移転。広大な敷地と新たな設備のメリットを生かして、デザイン・ガラス生地製作・加工までを一貫して自社で行う体制を整えている。特に東京の江戸切子作家から熱烈に支持されており、数多くの工房に生地供給を行っている。100年以上続く老舗といえど、進化を続ける手を止めてはいない。
■ガラスメーカー独自の方法で戦う、二人のキーマン
小樽切子を発展させたキーマンが、5代目・出口新一郎氏の息子、出口健太氏だ。それまで細々と続けてきた切子を、大きく打ち出していくために変革した。「ガラス生地メーカーである自分たちでしかできないことは何か? と考えたときに、独自のガラスとカットで凄いアイテムを作り出せるのではとアイデアが湧きました」と健太氏。しかし、ガラスを作ることはできてもカットをすることは門外漢。そこで切子の技術修得のため、江戸切子の伝統工芸士である篠崎英明氏に教えを乞うことに。篠崎氏のもとで修行を積んだのがもう一人のキーマンである切子職人・沼田たまえ氏だ。プロデュースを健太氏、技術分野を沼田氏が担い、アイデアを出しあいながら独自の表現を追求している。「小樽切子の作り手をもっともっと増やしていきたい。そしてゆくゆくは伝統工芸にしたいと思っています」(健太氏)。
■門外不出の「黒」が冴える、琥珀のオールド
細かいカットを無数に施した、小樽切子の代表作といえるのがこの「黄金(こがね)オールド 燦(さん)」だ。デザインは上下に分かれている。下半分はびっしりと魚子文を刻み、中央の色ガラスのラインを隔てて菊繋ぎ文に変化。そして大きく交差する矢来文をアクセントにしている。カットを多くしているのは、アンバーカラーを際立たせるため。手磨きでフィニッシュした滑らかなエッジと、黒・金赤それぞれの色ガラスの中で琥珀色が輝く様は、うっとりするほど美しい。実はこのアンバーカラー×黒の組み合わせは、どこにも供給していない小樽切子専用のクリスタルガラス生地であり、他では手に入らないカラー。そんな希少性を肴に、ウィスキーや焼酎をこのグラスで味わえば、いつもと違ったお酒の時間を過ごせそうだ。知る人ぞ知る小樽切子というツウ好みなチョイスもまたよし。