話題をさらった美大出身・江戸切子の新星。アンバーカラーのロックグラスで、静かなる晩酌時間を!
注目の若手作家の新作! マジックアワーに想いをのせて。
その江戸切子は、夜の訪れによって輝きが解き放たれる——。夕闇のトワイライトタイムを閉じ込めたかのようなマジカルな表情を持つこちらは、若き江戸切子職人、松井文孝氏の手によるもの。琥珀地の色被せガラスの魅力を引き出し切った表現、それを可能にする師匠譲りの精緻な技から目が離せない!
美大出身の確かな目と技で頭角を表す新世代の職人
2023年の江戸切子桜祭りに先駆けた第3回テーブルウェア新作展において、並み居る猛者たちを差し置いて第3位にあたる「ブロンズ賞」に輝いた青年がいた。彼こそが松井氏であり、入門からわずか一年での快挙は周囲をあっと驚かせた。
多摩美術大学のグラフィックデザイン学科を卒業した後、写真の世界に身を置くなど、幅広い芸術表現に触れてきた経歴を持つ松井氏は、江戸切子と出会い、自分の天職だと確信。三代目の根本幸昇氏が掲げている「工芸から藝術へ」といった思想に惹かれ、2022年に根本硝子工芸に入門した。
師匠も太鼓判! 江戸切子職人としてのセンスと技
伝統工芸士である二代目の達也氏は最初は弟子入りを断ったものの、数ヶ月後に再度現れた松井氏の作品を目にし、才能を見出して育てる決意をした。現在は切子製作に熱心に取り組む松井氏について「なかなかいいものを作る」「たった数年でここまでできるようになってびっくりしている」と太鼓判を押す。名匠である達也氏と、若い世代の中でも屈指の表現技術を持つ幸昇氏から薫陶を受けた伝統の技、芸術への並々ならぬ情熱、そして持って生まれたセンスにより、唯一無二の切子表現を追求している。
一本の線にこそ神は宿る。大胆かつ繊細な表現で想いを活写
2023年にブロンズ賞を射止めた「祈想」は、亡き母への想いと祈りを込めて創り上げた作品。コンテスト用に仕上げたこのグラスを、より実用的にリデザインしたのが今回の「祈想-誠-」である。「人間が生きていく上での真摯さ、祈り続ける心の美しさ、繊細かつ力強さも感じるそれら『想い』の力を、江戸切子で具現化しようとしたのが今回のテーマです」と松井氏。生地に深川硝子工芸のアンバーカラーのクリスタルガラスを選び、琥珀色+ワンカラーの美しい世界が現前する。
ぐるりと28本入れたカットなど、縦線の躍動がまず目に付く。形も大きさも異なるこの線は、なんと同じサイズのダイヤを使って、力のかけ加減で太さを調節し、先端へと細く伸びる線は一発で決めているのだとか。一本の線の強弱は、幸昇氏からの影響だ。「太い-細い線をなめらかに、先から先までを繊細に表現するのは幸昇さん譲り。これほど先端を細くするカットは他ではあまりやらないし、ギリギリのところで繋がらずに止めたことで緊張感が出る。そこを意識しています(松井氏)。口元近くには菊繋ぎで彩り、伝統の意匠をクロスさせて江戸切子らしさを主張する。
角張ったダイヤの形は、松井氏独自の表現だ。普通にカットすると雫模様になるところを、先にボトムを一周剥くことで段差が生まれ、そこをカットすることでダイヤの形が描かれる。描きたい意匠を形成するための創造力は、グラフィックデザインの経験で蓄えたもの。松井氏の生き方すべてがこの江戸切子に注がれている。
琥珀色が最も溜まる底は太いカットを集結させ、視覚的なポイントとどっしりとした安定感を生んでいる。ナローなえぐれに指がかかり、持ちやすさも考え抜かれている。飾るのではなく、実際に使ってもらいたいという気持ちの表れだ。
一人のお酒時間を、静かに、優雅に、豊かに。
夜の室内に小さな灯がともる。テーブルに置けばそんな錯覚すら禁じ得ない江戸切子の存在感がすごい。ウィスキーや焼酎をロックで、カランと氷の音を鳴らし、じっとグラスを見つめながら飲む。日常の句読点になるようなそんな時間が、ここに約束されている。
江戸切子の名門で薫陶を受けた技、厳しい芸術作品への目、その二つでオリジナルの切子表現を磨く松井氏の作品で、旨い酒を飲もう。
プロフィール
松井 文孝
江戸切子職人
2018年 多摩美術大学 美術学部 グラフィックデザイン学科 卒業
2022年 根本硝子工芸 入門
2022年 第5回 北近江サケグラス公募展(黒壁慶雲館) 入選
2023年 江戸切子新作展 第3回 テーブルウェア作品展 ブロンズ賞
カラーバリエーション
アイテム詳細
素材:クリスタルガラス
サイズ:最大直径77m
m×高さ100mm
容量:320ml
※一点一点手作りのため、サイズや重さについては個体差があります。
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