江戸切子の入門はこれ!赤青ペアがおすすめ!「矢来」と「魚子」の伝統文様の美を実感して——。
このシンプルさが使いやすい。江戸の伝統文様が映える!
腕を競うように、一心入魂の超絶技巧をガラスに刻む江戸切子職人の「作品」は、素晴らしいものに違いない。しかし、作家の意志を極力込めず、純粋に伝統文様を描いた器もまた味わい深い。江戸切子ブランド「彩鳳」(さいほう)が長い間作り続けている「菱魚子文様 ぐい呑」はまさに後者のアイテムの筆頭だ。2つの伝統文様が絡み合う潔いデザインは、他の切子よりも“江戸切子らしさ”がシンプルに伝わり、「普通に、いい!」と快哉を叫びたくなる魅力がある。これはぜひ、江戸切子の入門として、赤青ペアで揃えて使いたい!
幾人もの凄腕職人を輩出する令和の名門工房!
「彩鳳」を作るのは、埼玉県草加市の江戸切子工房、ミツワ硝子工芸。1971年に創業し江戸切子の製作を開始、下請けとして業界の黒子役を果たしつつ、平成になってから自社ブランドを展開し始めた。現在ではその美しさと手仕事の確かさで江戸切子ファンの間で人気を確立している。
ミツワ硝子工芸には10名ほどの江戸切子職人が在籍しているが、個人名を出した作家としても活躍している。2024年の江戸切子新作展で女性初となる1位を獲得した山王丸まゆみ氏をはじめ、細小路圭氏・山田のゆり氏・吉川太郎氏の3名の伝統工芸士を擁する他、若手の育成にも力を入れる。彼らは、毎年春に行われる「江戸切子新作展」では並みいる名人たちに引けをとらない作品で存在感を発揮しており、今や大きな賞の常連だ。その独創性の高い作品群は、業界でも一目置かれている。
シンプルに、繊細に。手練れたちの職人技とバランス感覚の勝利!
そんな彼らが作っているのだから、当然ながら技術的には超一級。とりわけ「菱魚子文様 ぐい呑」の文様は、ミツワ硝子工芸が創業当初から作り続けている息の長いデザインだ。ロングライフのわけは、江戸切子のカット技術をミニマムに表現していることと、見続けても飽きがこないバランス感覚にある。
江戸切子を知れば知るほど、技の凄さがどう表現されているかに目がいきがちになる。だが美術作品ならともかく、器としての江戸切子の本懐は、デザイン性、使い勝手の良さ、そして長く愛していけるか、こういった点にあるのではないか。何をして、何をしないのか。そのバランスが肝心になる。
「菱魚子文様 ぐい呑」はそのバランスが秀逸なのだ。特徴的なのは、直線のカットがクロスする伝統文様の「矢来」。これを本体にぐるりと刻みつけ、江戸切子らしさやカットの煌めきを演出している。
そして、矢来の菱形の囲みに一個飛ばしに刻まれているのが「魚子」(ななこ)文。22本もの細かいカットを入れ、魚の卵のように連続した模様を残している。矢来と魚子、二つの伝統文様が競演するプチ贅沢を堪能したい。
色被せガラスの赤と青をしっかり残しつつ、江戸切子のカットをデザインするセンスが見事。ミツワ硝子工芸ではかつて、どの形のグラスにもこの二つの文様を入れたデザインを展開していたという。「江戸切子らしさ」を最小限のカットで伝えられる表現なのだろう。
ボトムには大きく丸いカットが施され、中の飲み物に明るい光と、対面の反射を呼び込む。
普通のぐい呑みよりも少し背の高いグラスということで、たっぷりめに日本酒を注ぎたい方にもぴったり。また、ショットグラスにも近い形状だから、ウイスキー、ラムやテキーラなどのスピリッツ、リキュールなどをストレートで味わう際にもふさわしい。
矢来と魚子の部分のおかげでグリップ感もよく、持ちやすくなっているのもポイントだ。
日常の江戸切子として、使い勝手が抜群! 赤青ペアもおすすめ◎
ミニマムだけれど、見飽きない。アノニマスで普遍的な江戸切子の魅力を携えているのがこのぐい呑み。酒席にもこのとおり、主役を張れる華やかさがありつつ、ギラギラしすぎていないから脇役にもちょうどよく、自分好みにテーブルをコーディネートできる便利なやつ。飲み物の他にも、和食の先附や、ひと口スープの器として活用できそう。
二人で飲む昼酒で、差しつ差されつやるときにも、なんだかこれくらいがぴったり。日常にフッと忍び込ませることができるデイリーな江戸切子として、長く愛していけそうだ。入手するならぜひ赤青ペアで! プレゼントや返礼品にもおすすめ。