希少なクリスタルを、厚く・重く・ゴツく
3層のガラスで表現、これぞ男のロックグラス
■驚異の売れ行きを記録した異彩の江戸切子がついに到着!
2018年4月、東急プラザ銀座で行われた江戸切子新作展にてひときわ存在感のあったロックグラスがある。3日間の開催で10個以上を販売するという驚異の売れ行きを記録。「他にも江戸切子を持っているけど、こんなグラスは見たことない」と2個買っていく方も。たくさんの江戸切子が並ぶ中、そうして明らかに異彩を放っていたのがこの「男のロック」をはじめとする鍋谷淳一氏のシリーズだ。なんといってもこの量感・物体感が他とまったく異なる。なぜなら、鍋谷氏の意向でそういうガラスをわざわざ特注しているから。ギラリとシャープに光り輝き、江戸切子好きもハッとさせられる「玄人好み」のデザインをご紹介したい。
■蒲田で活躍する江戸切子の伝統工芸士
鍋谷グラス工芸社は1949年創業、鍋谷淳一氏で3代目となる江戸切子工房だ。創業当時、ガラス生地の生産から加工まで行う「カガミクリスタル」が東京・蒲田にあり、その協力会社として誕生した。もともと鍋谷氏自身は会社を継ぐ気はなかったが、あるとき父の作った江戸切子を見て考えが変わった。「それまではただガラスを削っているだけの下請け仕事にすぎないと思っていたのが、急に創造的なものに映り始めたんです。これはひょっとして、やり方次第でおもしろい仕事になるのでは、と」(鍋谷氏)。以来20年以上江戸切子の職人として活躍し、2009年に伝統工芸士となった。
■とにかく厚く! 3色被せのオリジナル生地
鍋谷グラス工芸社のガラス生地は、ガラスの中でも一級品と称されるカガミクリスタル製をほぼ100%使っている。カガミクリスタルの生地を使える職人はわずか数名のみで、その中の一人が鍋谷氏なのだ。今回のロックグラスは「とにかく厚く、重く」と特注したオリジナルの生地で、最も内側に透明なガラス、その上に2層の色被せガラスという「3色被せ」の珍しいタイプだ。3色であればガラスを「削る・残す」ことにさらに広い表現が可能になる。そして極厚ゆえに、鍋谷氏の近年の作風である「力強く深いカット」をいかんなく発揮できていることが特徴だ。口元近くまでびっしりとカットが入れられるもの、この分厚さのおかげ。
■このゴツさは他にない!「男のための」ロックグラス
「ガラスって繊細できらびやかですから、女性が好むイメージがこれまでありました。それを男性向けにするとどうなるか、という観点で作ることがこの頃は多いですね。その最たるものがこの『男のロック』です」(鍋谷氏)。ボディに交差する深いカットと、底のザクザクとしたガラスの武骨な様子は確かに男らしく、まるで「メカ」のような雰囲気がある。それらのダイナミックなカットと対称的に、隙間に入れた籠目文・菊繋ぎ文がとても細かく並んでいる。手に持つとズシリと重く、ガシッと握らなくてはならない。このゴツさは、確かに「男」の名がふさわしい。実は非常に限られたガラス生地のため、次回入荷は未定。江戸切子好きは素早くチェックしていただきたい。