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デザイナー 森田恭通(後編)

藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”を語り合う「ゲストインタビュー」。今回のゲストはデザイナーの森田恭通さん。神戸・三宮にあるバー「COOL」の内装からスタートして26年。世界中でその才能と実績を認められる森田さんが考える、モノとの幸せな関係とは??。ご自身がインテリアデザインを手がけたという「CROSS TOKYO」でお話を伺いました。(後編)
前編はこちら

よいデザインとは、
“商売の起爆剤”である

藤巻 デザイナー森田恭通にとって「デザイン」とは何だと思いますか。
森田 今、僕が求められている役割は大きく2つに分けられるんです。一方は予算などの制約のなかで、“商売の起爆剤”になるようなデザインをする「D森田」、もう一方は自由に好きなことを追求するアーティストとしての「A森田」です。
藤巻 デザイナー(D)とアーティスト(A)の定義が明確に分かれている。
森田 デザイナーはどれだけ格好いいものを作っても“結果”につながらなければ、あまり意味がないと思っています。
藤巻 おっしゃる通り!

森田 いいデザインは人をハッピーにしてくれるのと同時に、売上げも上がる(笑)
藤巻 あの斬新なデザインは、何をどのようなとっかかりにして生まれてくるものなんですか。
森田 僕が常に考えているのは「何がないんだろう?」ということです。店舗にしても、地域にしても何かしら欠けているものがある。“あったらほしいな”“これまで、どうしてなかったんだろう?”探り当て、デザインの力で形にするのが僕の役目です。
藤巻 これだけモノが溢れているけれど、欲しいモノは案外見つからないんですよね。
森田 僕たちデザイナーは「欲しい!」と思うようなものを世の中に送り出していくのが使命だとも言える。
藤巻 同じようなものが多すぎるんですよね。
森田 求められているのはオリジナリティ。日本は不況だと言われて久しいし、ものづくりの現場も厳しい状況に直面している。でも、日本には世界に誇れる“ソフト”があるんです。クリエイティビティのレベルの高さは、世界と勝負する切り札になりうる。
藤巻 非常に繊細なクリエイティビティを持っているんですよね。
森田 ぜひどんどん海外にも輸出したいし、逆輸入もしたい。デザインは日本を良くする力を秘めていると思うんです。

身近なデザインに秘められた
暮らしを変革するパワー

藤巻 “ありそうでなかったもの”といえば、森田さんのルームディフューザーもそうですよね。
森田 ルームディフューザー本体だけではなく、香りもデザインしています。
藤巻 「香りもデザインする」というのが、斬新ですよね。
森田 あるテーマでイメージを膨らませるところからはじめるんです。すごくキレイな女性を想像し、その人が身につける香りだとしたら、どんな香りだろう……とかね(笑)
藤巻 僕は「フィグ」を愛用していて、仕事部屋にも置いています。リフレッシュできるし、気分が上がる大好きな匂い。女性につけてほしい香りでもあるんですよね。

森田 照明をひとつ変えても、空間はガラリと変わる。僕がホームウェアを手がける理由はまさに、そこにあります。
藤巻 身近にあるデザインを大切にするって、できているようで案外できていないことのひとつかもしれない。
森田 この花瓶はルシアン ペラフィネとのコラボレーションです。
藤巻 これはまた、面白いですね!

森田 ルシアンのカシミア製ニットが大好きなんだけれど、あるとき出会って意気投合して、“何か一緒に作ろう”という話になったんです。
藤巻 どうして花瓶だったんですか。
森田 部屋に花があるとハッピーになるでしょう?(笑)
藤巻 なるほど!
森田 花瓶はクリスタルでできているんだけれど、ヨーロッパで吹いたクリスタルを持ち込んで、日本で加工。日欧の技術をミックスして作ったものなんです。
藤巻 一流のデザイナーが組んで、日常使いのものを作るのは新しい潮流になりそう。
森田 二つの個性がぶつかりあうことで、これまでになかったものが生まれてくるのが楽しいですよね。

世界のモリタが東京をデザインするとしたら……?


藤巻 森田さんは日本と海外を行き来しながら仕事をしているわけだけれど、海外で過ごす時間は森田さんにとってどんな時間?
森田 強行スケジュールが多いんですよね。この間も、4日間でマイアミとロスに行き、プレゼンして帰ってきました(笑)
藤巻 プレゼンという闘いの現場でもある。
森田 あと、必ずやるようにしているのは、その土地や街でいちばん人が盛り上がっているところに連れて行ってもらう。“そこに勝つにはどうすればいいか”から考えるんです。
藤巻 なるほど! では、もし、デザイナー森田恭通が東京をデザインするとなったら、どうですか。どんなことをやってみたい?

森田 公園の使い方を変えてみたいですね。例えば、ロンドンでは公園の中に「サーペンタイン・ギャラリー」という入場無料の美術館があります。毎年夏になると、一流の建築家にデザインを依頼して設営される夏季限定のカフェもオープンする。人々はくつろいだり、アートを楽しんだり、さらには購入したアートを持ち帰ったりできるんです。
藤巻 日本にはまったくなかった発想ですね。
森田 日本では規制が多いというのもあるんだけれど、デザイナーが参加できる範囲が少なすぎるんです。公共のエリアにデザイナーが立ち入る余地が少ない。
藤巻 でも、じつは公共施設のデザインこそが大事ですよね。
森田 2013年の夏前に完成予定なんですが、ちょうど今、京都の京福電鉄・嵐山駅をデザインしているんです。
藤巻 いろいろやってますねえ(笑)
森田 直径25cm、高さ3メートル近くある透明のパイプに京友禅を入れ、それをモティーフに駅をデザインしました。
藤巻 ええ!?
森田 実験過程で、まずそのモティーフを5本立ててみたんです。それだけでも視覚効果が凄い。さらにこれが相当数立つとなると、それだけで観光が成り立つと思うんです。
藤巻 凄いことを考えますね。
森田 東京都の公共の場所でもぜひやってみたいですね。


<対談を終えて……藤巻幸大から森田恭通さんへ>

デザイナーは与えられた条件の中で、素晴らしいデザインを通じて売上を伸ばす。まさにそのとおりだなと思いました。ものづくりの現場では多くの人がモノが売れずに悩んでいる。でも、アーティストとデザイナーを混同してしまっているのが原因ということもまた多い。売れるものを作れる人は、お客さんの気持ちがよくわかっている。ドキドキさせてくれるんです。森田さんと話をしていて、伊勢丹で「8割いる女性社員をどれだけ盛り上げるかが、お前等の仕事だ」と言い渡された新入社員の頃を思い出しました。僕は我ながら、宴会の司会が最高にうまいんですよ。「社長、やりすぎですよ」と叱られるけれど、面白がってもらいたい。これはもう、性分なんですね。ぜひ、これからも一緒に日本中、世界中にワクワクを届けていきましょう。

~森田恭通さんのゲストインタビュー~

「ボア パー ヤスミチ モリタ」のルームディフューザー
森田氏がボトルはもとより、香りもデザインしたという「ルームディフューザー」。 対談の中でもキーワードとして登場した「タイムレス」な空間を演出してくれる逸品。 香りの種類は全6種類。藤巻幸大は「002フィグ」を愛用中。

■前編『デザインをするうえで大切にしていること』
世界を股にかけるデザイナーが大切にしているデザインのエッセンスとは???

森田恭通
もりたやすみち●1967年大阪生まれ。GLAMOROUSco.,ltd.代表。2001年の香港プロジェクトを皮切りに、ニューヨーク、ロンドン、上海など海外へも活躍の場を広げ、インテリアに限らず、グラフィックやプロダクトといった幅広い創作活動を行なっている。2011年にはプロダクトデザイン会社「code」も設立。
The International Hotel and Property Awards 2011、China Best Design Hotels Award Best Popular Designer、THE LONDON LIFESTYLE AWARDS 2010 (aqua LONDON)、 The Andrew Martin Interior Designers of the Year Awardsなど、受賞歴多数。

取材協力:
「CROSS TOKYO」
東京・六本木にある、森田恭通氏がインテリアデザインを手がけたユージュアルダイニング。
東京都港区六本木5-10-25 EXけやき坂ビルR棟2F
TEL:03-5772-1445
営業:17:00?翌4:00(L.O.3:00)
不定休
http://www.cross-tokyo.com/access/
※外部サイトへリンクします。

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