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ビームス代表取締役 設楽洋(後編)

藤巻幸大が各界で活躍する方々をゲストに招き、“モノとのつきあいかた”を語り合う「ゲストインタビュー」。今回のゲストはビームス代表取締役社長を務める設楽洋さん。日本のファッションシーンをけん引し、新たなライフスタイルを提案し続ける設楽さんが考える、大人とモノとの魅力的な関係とは(後編)
前編はこちら

ユニークな発想の源は
“ギャップ萌え”!?

藤巻 裏をめくるとセクシーなイラストが描かれているネクタイや足裏部分に愛のメッセージが書かれた靴下といったユニークなアイディアは、どういったことがきっかけで思いつかれたんですか。
設楽 ネクタイは「最近ネクタイが売れなくなった」と相談されたのがきっかけです。 「ネクタイは必要ない」と思っている人たちに、いかに素晴らしいネクタイなのか蘊蓄を語っても響かない。ならば、“ネクタイをしたくなる理由”を作っちゃおうと想ったんだよね。普段はネクタイにまったく興味を示さない若いヤツに「欲しい!」と思わせたら勝ち(笑)
藤巻 これは買っちゃうでしょう。見た瞬間、やられた! という気持ちになる。

設楽 “ラブソックス”はもともとは、ある男性向けファッション誌からコラボアイテムを作りたいと相談されたんです。デザインも、僕自身にやってほしいという話だった。ソックスはペアではくもの……ペアと言えば、男女……ふたりあわせるとラブになると、連想ゲームのように考えてつくったのが、あのアイテムです。
藤巻 楽しいなあ。たくさん人と会って、遊んで、コミュニケーションをとっているからこその発想ですね。
設楽 もっといろんな人と食事や話をしたいけれど、なかなかできていないんですよ。 忙しいとまともな昼飯も食えず、社長室でコンビニおにぎり片手に、カップ麺をすすることもしょっちゅう。
藤巻 このおしゃれな社長室でカップ麺にコンビニおにぎり!

設楽 うん(笑)。社員にも「社長、えらくみすぼらしい昼飯食ってますね」とからかわれて悔しいので、ルイ・ヴィトンのカップヌードルケースを作ろうかと思ってるんですよ。
藤巻 え!? 
設楽 エルメスやヴィトンでシャンパンボトルを入れるケースをつくるのは普通。でも、そこであえてカップヌードルを入れるケースを作るという落差が面白いでしょ?
藤巻 一流のものを日常生活の中で楽しむというのがいいですね。しかも、笑える!(笑)。日本のものづくりに一番欠けている視点かもしれません。

あらゆる失敗を重ね、
大人の色気が醸成される

藤巻 設楽社長にお会いするたび、“色気のある大人”っていいなあと、つくづく思います。年齢を重ね、遊び心や色気といったものを身にまとえる人と、そうでない人は何が違うんでしょうか。
設楽 あらゆる失敗をし、ドン底から這い上がる経験を重ねることでしょうね。藤巻さんもたくさん失敗してきたでしょう?(笑)
藤巻 はい(笑)。バーニーズニューヨーク新宿店がオープンしたときの大失敗は忘れられません。当時、伊勢丹の倉庫勤務からいきなりバーニーズニューヨークのバイヤーに抜擢されて、買い付けを任されてしまった。右も左もわからないけれど、わからないなりに、これぞと思うものを仕入れ、周囲にも「いいものを買いましたね」と褒められて、鼻高々だったんです。

ところが、ところが、オープン2日目に当時の社長に呼び出され、「お前のフロアだけ、売り上げゼロだぞ!」と告げられて……。未だに夢に出てきます。
設楽 僕も似たようなことをやっていますよ。1980年代の渋カジブームで“紺ブレ”が飛ぶように売れていた頃、ある日突然、ピタっと売れ行きが止まってしまった。残ったのは山のような在庫ですよ。あれ以来、「POSデータが跳ね上がったら、潮時」という空気が社内に生まれた。

藤巻 勉強になります。
設楽 実践するのはホント難しい。商売としては、これからが美味しいというタイミングだから(笑)。でも、流行を追いかけるだけでは、老舗になれない。
藤巻 ファッションや飲食店、ものづくりの現場に至るまで、あらゆるジャンルに言えることかもしれませんね。
設楽 ディスコやクラブ、流行りのレストランでも同じことが起きていますよね。流行に敏感な新しいもの好きの人たちは、新しい店ができると、そちらに移っていく。すると、客層が変わり、まったく同じメニュー、同じサービスを提供しているにも関わらず、「最近つまらなくなったね」と評されるようになったりする。
藤巻 おそろしいですね……。
設楽 「どうやって陳腐化を防ぐか」は、あらゆる分野でもっと重要視されるべき課題ではないかと思います。

大企業と流行の最先端をつなぎ、
“お茶目”な本物を世に送り出す

藤巻 これからのBEAMSが目指すこと、実現したいことを教えてください。
設楽 次にやるとしたら、在庫を持たない商売ですね(笑)。とくにレディースものは危険。一気にムーブメントが盛り上がるけれど、終わるときは一瞬。恋愛と一緒ですね。男は過去につきあった相手の写真を横に並べていくけれど、女の子は縦に重ねていく。
藤巻 わはははは。
設楽 BEAMSは大企業でもないし、かといってものすごく小さいパイを相手にするものづくりの集団でもない。でも、だからこそ、どちらともつながれるし、橋渡しができる。
藤巻 僕が勝手に思っていることなんですけど、設楽さんにはぜひ、リビングや住まいも手がけてほしい。あと、文房具も!

設楽 文房具は以前、いくつかやっているんです。「東京ディズニーシー」の開園5周年記念でつくった「マッキーマウス」とか、セブン・イレブンで限定発売したメンソレータムリップスティックに似たスティックのりとか(笑)
藤巻 またまた、どれもトンチが効いてますね! 
設楽 ものづくりというと、どうしても優れたデザインを生み出すことに夢中になってしまう。デザインも大切だけれど、もっと洒落の部分にも目を向けるといいのかなと思うんだよね。それなりに経済力があって、目も肥えているという人が求めているのは、面白さ。じつは“ちょっとしたお茶目”に弱かったりするんです。
藤巻 わかる気がします。誰かに見せたらウケるだろうなと思えると、多少高くても惜しくない。
設楽 デザイナーや建築家のように一芸に秀でているわけではないというジレンマを逆手にとって、「ミーハーな生活者の頂点を目指し続ける」というのが、僕らの役割なのかもしれません。これからも徹底的に遊びますよ(笑)


<対談を終えて……藤巻幸大から設楽洋さんへ>

僕にとって、尊敬する大先輩であり、憧れの人でもある設楽社長。“大人の遊び心”をそのまま体現しているかのような生き様に、ふわふわとした目先の流行だけを追いかけるような風潮がある中で、スタンダードを大事にしている。でも、同時に手にとった人が思わず吹き出してしまうような遊びの部分もうまくとりいれたアイディアの数々。その絶妙なバランス感覚に舌を巻く思いです。これからもぜひ、日本中をワクワクさせてください。僕もモテる大人、ウケる大人を目指して頑張ります!


■前編『モノも情報も溢れる今、尽きせぬ渇望感の正体とは?
モノと情報があふれているゆえの飢餓感についてどうアプローチするのかを設楽氏が語ります!

設楽洋
したらよう●1951年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒、1975年 株式会社電通入社。プロモーションディレクター・イベントプロデューサーとして数々のヒットを飛ばす。1976年、同社勤務の傍ら、「ビームス」設立に参加。1983年 電通退社。自らをプロデューサーと位置付け、その独自のコンセプト作りによりファッションだけでなく、あらゆるジャンルのムーブメントを起こす仕掛人として活躍。セレクトショップ、コラボレーションの先鞭をつけたことで知られる。個性の強いビームス軍団の舵取り役。1997年 ニューヨークADC賞金賞受賞。2004年 デザイン・エクセレント・カンパニー賞受賞。2012年 JR東日本交通広告グランプリ、Yahoo! JAPAN I.C.A.ブロンズ賞受賞。

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